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2016年日本公開予定というだけで驚く、いかにも日本では受けなさそうな映画『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』だが、個人的には面白く観ることができた。
舞台は2008年のフロリダ州オレンジ・カウンティのオーランド近郊都市。オーランドは保養地としてアメリカでも人気の土地であり、サブ・プライム危機の影響が最も大きかったという背景は知識として必要。
定職のない主人公デニス・ナッシュ(アンドリュー・ガーフィールド)も、不動産市場不況の影響を受け強制退去となる。まずこの強制退去のシーンがすごい。予告編でも幾分その雰囲気は伝わるが、「こんな風なんだ」と驚くばかり。
そして母と息子と3人で家を追い出され、かなり荒んだモーテルに移り住むことに。モーテルに長期間住むことを余儀なくされた住人のほとんどが、同様に不動産を失った家族だった。
立ち退きを強制執行するのは不動産ブローカーのリック・カーヴァ―(マイケル・シャノン)。彼らは銀行の所有となった不動産を転がして儲けており、強制退去させられた人々からは相当嫌われる対象らしいことが映画から伝わってくる。
主人公は、ふとしたきっかけから自分たちを家から追い出したその不動産ブローカーに雇われ働くことに。リックの不動産転売で儲ける手口はかなり悪どいものだったが、デニスもその教えを受け、成功へのハイウェイを駆け上がる。しかし彼は、住人を強制退去させることに常に罪悪感を持っていた。
そしてその罪悪感ゆえに、最後は自ら全てを失う結果を招いてしまう。
不動産ブローカ・リックのセリフは、アメリカで成功することとはどういうことかを物語っている。
"America doesn't bail out losers. American was built by bailing out winners.....by rigging a nation of the winners, for the winner, by the winners."
非常にリアルに、不動産不況が人々にどう影響したかのドラマを描いている。よかったのは、数々の強制退去の憂き目を見た人々が描かれ、老若男女、アメリカ人、非アメリカ人それぞれの表情があった。
ストーリーの難点は、強制退去させられた人々がみな善良な人々であり、不動産を利用して儲けようとした銀行や不動産ブローカーは悪者という、黒白はっきりした設定が分かり易過ぎるきらいはあったが、ドラマチックに仕上げるには仕方ないところか。
私生活で慈善事業に熱心なアンドリュー・ガーフィールドは好きな役者だが、彼の演技は特筆すべきものだった。
バンクーバーでもわずか2週間で打ち切りになるほど不人気の映画だが、それにしては惜しい映画。ただ、観て楽しくなる手の映画でないことは確か。
★★★★★ (5/10)
『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』予告編