映画『アリスのままで』観賞。
若年性アルツハイマーを発症した言語学者を演じる主演のジュリアン・ムーアは、この作品でオスカーを初受賞。監督のリチャード・グラッツアーはALSに罹患しており、自身の経験を映し出した渾身の作(そして彼はつい先日の3月10日にALSで死去している)。
個人的にジュリアン・ムーアは大好きな女優。グッチのデザイナー、トム・フォードが監督をした『シングルマン』で見せたように、スタイリッシュでセクシーな妙齢の女優と言えば彼女の右に出る者はいないのではないか。
この作品は水準以上ではあるが、このテーマであればもっとよくてもいいのではないかと感じた。原題は"Still Alice"で、邦題のように記憶を失ってもアリス(主人公の役名)はアリスのままということだが、それがダブル・ミーニングかと思わせるほど「静かな」演技。コロンビア大学で教鞭を取る言語学者であり、幸せな結婚と3人の子供に愛される女性の幸せを病魔に奪われる怒り、悔しさといった激しい面ももっと出してもよかったのではないだろうか。
例えば、昨年のオスカー主演女優賞は『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットが受賞したが、彼女があの映画で見せたようなどろどろしたものをもう少し見たかったように思う。
妻をいたわる夫の役を演じるのはアレック・ボールドウィンだが、彼には優しい夫・父の役は似合わない。顔がよすぎるからだと思う。結局、彼が仕事を優先して単身赴任を選ぶストーリーも中途半端。
家族にアルツハイマー患者がいれば、「こんなきれいじゃないんだけどな」という声が聞こえてきそう。
ということで、悪くはない、悪くはないけど惜しい、という出来の作品。
★★★★★ (5/10)
『アリスのままで』予告編