『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 (2014) A・イニャリトゥ監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~



映画『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』観賞。

この映画を観て、浮かんだ言葉は"improvisation(インプロビゼーション・即興)"。テンポよくラストシーンまで全く予想できない展開は、高度に構築されたフリー・ジャズの楽曲のようにスリリングな緊張感を観客に与える。「一発撮り」を意識したであろうカメラワークによる構成の新しさは非常に興味深かった。

監督は『21グラム』『バベル』といったシリアスな人間ドラマで高い評価を得ているメキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。彼がブラック・コメディに挑戦ということで大いに期待して観に行った。そしてそれは期待に沿うどころか、期待を上回る出来だった。

マイケル・キートン演じる主人公は、かつて『バードマン』というスーパーヒーロー映画で一世を風靡した落ち目の俳優。彼が再起を賭けたのが、全財産を投資して、自ら脚本、監督、主演を演じるブロードウェイの舞台だった。プレヴューの後、バーで彼は影響力の大きい著名な舞台評論家を見かけ、社交的に挨拶するが、彼女は「本物の役者ぶる映画スターは軽蔑している。明日の初日後のレビューではこきおろすつもり」だと宣言する。そして初日の公演で彼が取った行動は.....

笑えるシーンは多いが、コメディはあくまで「糖衣」であって、中身はビター。離婚して引き取った薬物依存症との娘との関係がうまくいかない父親、共演の役者との才能の差にプレッシャーを感じる役者、といった主人公の苦悩がテーマになっている。

既に多くの映画賞を受賞し、オスカーの呼び名も高い作品。カナダでも公開9週目ながら、私が観た回はほぼ満席という状況が評価の高さを物語っている。主演男優賞に、『博士と彼女のセオリー』のエディ・レッドメインの強力なライバル現るといったところだが、むしろ助演のエドワード・ノートンの演技を評価したい。映画ファンなら見逃せない作品であることは間違いない。

★★★★★★★ (7/10)

『バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』予告編