私のガキの頃は、遊ぶことが1番だった。
夏休みは真っ黒になるほど川や山で遊んだ。
近所に空き家があった。何人か集まって何をしようかと
なった。だれかがチャンバラ・ゴッコはどうだと云った。
この仲間のリーダーはTさん。やろうと云うことになったが、
カタナにするものが何もないから、アス棒きれを持って
こいと云うことになった。さてみんな棒きれを持ってきた。
チャンバラって映画しか知らないから、始めーと云われて
30秒もあれば、みんな斬られていた。私なんかはチビだ
から真っ先に|やられた|と云って倒れている。
そこでTサンは簡単に殺陣をつけた。私は|月さま、
ハルサメじゃぬれていこう|とセリフはらどうだ、即却下、
女の子がいるわけじゃないからな。私は|丹下左膳|の
ハナシをした。劇中|高瀬実乗タカセミノル|と云う脇役
がいて、|あのねオッサン、わしゃかなわんよ|と云うんだ。
と、いきなりTさんは、それで行こうと云った。
それからと云うもの私は斬られて倒れるときー
|あのねオッサン、わしゃかなわんよ|と云いながら倒れた。
しかしこれとて何回も練習させられた。いまから考えてみると、
たかがチャンバラ・ゴッコにも|間マ|があったんだ。
これは空前絶後の大演技だった、なに早いハナシがみんなが
知らない。私だけが知っている演技見本があったんだ。
誰にも云わない内緒、Tさんはほうびにキャンデーを買ってくれた。
いまで云うなら|演技賞|ものだった。