マダイン・サーレハ遺跡

中東歴訪中の安倍晋三首相は、サウジアラビア初の世界遺産「マダイン・サーレハ遺跡」
を視察して、「サウジアラビアのいにしえより守ってきた伝統や文化を感じることができた」
と述べています。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200113-00000532-san-pol

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200113/k10012243981000.html

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54339910T10C20A1PE8000/

「マダイン・サーレハ遺跡」は、イスラム教以前の古代遺跡ですが、
サウジアラビア政府は文化財保護の対象にしているようです。


しかしながら、1780年にオスマン帝国がメッカ付近に作った「アジャド要塞」は、
超高層ビルを建設するため、トルコ政府が猛抗議をしたにもかかわらず、2002年に
取り壊されました。

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/08/post-8354.php

「アジャド要塞」は、貴重なオスマン建築の遺産とはいえ、世俗的な文化遺産ゆえ
厳格なイスラム教国であるサウジアラビアの価値観から保存する意義が
認められなかったのかもしれません。


ならば、メッカにあった預言者ムハンマドの生家を壊したのはどう説明される
つもりでしょうか。

https://courrier.jp/translation/66504/

もし、イエス・キリストの生家が発見されれば、世界中のクリスチャンから
多額の献金が寄せられるなど、保存運動が起きることは間違いないでしょう。

1805年、イスラム原理主義のワッハーブ派がメディナにあったムハンマドの墓廟
を破壊したのも信じられない話です。

浄土真宗の信者が親鸞の墓を潰すとか、法華宗の信者が日蓮の墓を壊すような
ものではありませんか。


新泉社から2015年に発行された『イスラームと文化財』には、
「(サウジアラビアは)文化財(ひいては歴史)については
イスラームに関わるものだけを保護し、他のものを否定
しているわけではない。」とあります。

確かに、サウジアラビア政府は、「マダイン・サーレハ遺跡」や近代化遺産の
「ヒジャーズ鉄道」など、イスラム教と関係ない文化財を保護したりも
しています。

ですが、メッカでは、ムハンマドにゆかりがある1000年以上古いものも含む
歴史的な建造物の約95%が失われるなど、文化財が大事にしているとは
いえません。

サウジアラビアほど政府が率先して文化財を破壊している国はないでしょう。