神奈川県には有名な温泉地、箱根がある。湯けむりが漂う天然の温泉地が果てしなく広がり、富士山が湯けむりの間に見え隠れする。山々に抱かれ、透き通って穏やかな芦ノ湖や、湖畔にある箱根町は、たいへん静かで美しい。多くの人々がこの落ち着いた雰囲気の中で癒されてきた。だが、アニメの世界では、この地が別の顔を見せている。湖面は巨大な鉄板で覆われ、数十の鉄筋のビルが湖底から突き出て、さらに地底深くにはピラミッド状の秘密の要塞が隠されている。要塞の入口には、「NERV」と書かれている。この世界では「箱根」はかつて使われた名前に過ぎず、現在の名前は「第3東京市」である。そう、そのアニメとは「新世紀エヴァンゲリオン」である。アニメファンにとって「第3東京市」への聖地巡礼は、温泉に入ったり富士山を見たりすることより意義があるのである。 近頃アニメと関わりのある旅行プランがますます人気を集めている。それは三鷹市のジブリ博物館を見学したり、秋葉原で買物をしたりというような簡単なことばかりではない。有名でもなく、観光地でもないような多くの場所が、アニメ作品の舞台として採用されたために、アニメファンが訪れる「聖地」になってしまったのである。例えば、練馬区の片隅の、都心の喧騒から遠い場所なのに、外国人観光客が次第に増えているところがある。彼らがわざわざ練馬区にやって来るのは、なぜなのだろうか?三本の土管が置かれた空き地で記念撮影をし、食料品店でたくさんのドラ焼きを買い……そろそろおわかりだろうか?練馬区とは、ドラえもんの家がある場所なのだ。この他、「スラムダンク」や「GTO」の人気も衰えず、これらの物語の舞台である西東京の武蔵野市に行く人もますます増えている。 現在アニメをテーマにすることが旅行業界の焦点になっており、日本の旅行業界や漫画・アニメ業界では、全国のアニメの「聖地」を探し始めている。その結果、こうした場所はすでに全国の都道府県すべてに散らばっており、ツアーにすることが可能な場所もあることがわかった。例えば東京から「頭文字D」の車のルートに沿って群馬県まで行き、「日常」の物語の舞台を観光する。あるいは、鳥取県まで飛行機で飛んで、名探偵コナン記念館を見学すると同時に、「ゲゲゲの鬼太郎」の創作された場所を見るなど。……きっと面白い旅になるに違いない。 |
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