ゆっくり歩いてみよう | 「週刊・東京流行通訊」公式ブログ

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東京に暮らす中国人が見た、リアルタイムのこの国のすべて・・・






その時はまったく何の音も聞こえず、ただ戦慄の瞬間だけだった。映画のスローモーションのように、その場面が何度も心によみがえる・・・人気雑誌「中国語ジャーナル」の依頼で、編集部を訪れて「故郷自慢/西安篇」の録音を済ませた帰り、電車の発車を告げる音を聞いて慌ててホームに下りていったところ、後で後悔するような結果になった。駅の階段を4~5段踏み外して、右足の関節を地面の上でひどくくじいてしまったのだ。

起き上がってみてびっくりした。右足首が仏像のように腫れあがり、関節がなくなり、足も指も紫色のあざになっている。自分の足の骨のこんなに詳細なレントゲンを撮ったのは初めてだ。お医者さんは骨折寸前だったと分析した。・・・23年前に日本の土を踏んだ時から、バタバタと走り回っていろいろな人と縁を結んできた。だが今、がまんできないほどの激痛を味わいながら自問してみる。毎日忙しくしているのは、一体何のためなのか?・・・二つの目覚まし時計に楽しい夢を中断されてベッドから飛び起き、走っていって超満員の通勤電車に乗り込み、昼は仕事の合間に慌しく「立ち喰い」を済ませ、残業の時は終電に間に合うかどうかを心配しする。長い日記から短いブログへ、短いショートメールから140文字の微博(ウェイボー)へ、心をつなぐ交流はますます短くなり、生活のぜんまいはますますきつく巻かれる。重圧に押しつぶされて日に日に心身が疲れ果て、忙しさのために生活を楽しむ権利が失われていく・・・。


ベランダの手すりをつかんで、限りなく広がる東京湾の水を眺めていると、なぜか突然故郷の長安が懐かしくなった。日の出や夕焼けにぼんやりと浮かぶ鐘楼と鼓楼、「人」文字型を作って南へ飛ぶ雁の群が映る華清池・・・暮色の中で深く重々しい声が青空から聞こえてくる。もっとゆっくり、のんびりとしなさい。ゆっくりと眺めれば、小さな発見や温かさに出会えるだろう。心をのんびりとさせれば、しなくていい失敗やうっかりミスが減らせるだろう。ゆっくり話せば、考えももっとまとまるだろう。生活をのんびりとさせれば、心身がゆったりしたもう一つの世界を味わえるだろう・・・。一週間前から、毎日早めに家を出て、電車が混み合う通勤ピーク時を避けている。六本木で乗り換える時も以前のように三歩のところを二歩で歩くようなことはせず、エスカレータの右側を駆け上がることもなく、駅に着いたら自動改札口を急ぐ人に譲り、足を引きずって会社までゆっくり歩いていく途中では、景色をのんびりと鑑賞し、時々立ち止まってiphone4Sを取り出して写真を撮る。・・・ゆっくり歩いて、生活のリズムもゆっくりにする。この「ゆっくり」を感じることは、何かを味わうというだけでなく、生活の質を味わうということなのかもしれない。














Photo by Yao Yuan

心理学講座/心の余裕 http://www.counselingservice.jp/lecture/lec166.html