今宵の月は格別に美しい | 「週刊・東京流行通訊」公式ブログ

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東京に暮らす中国人が見た、リアルタイムのこの国のすべて・・・

日本で20年以上の歳月を過ごしてきた。春節を初めとして、清明節、端午節、中秋節など、たくさんの物語を思い起こさせてくれる故郷の行事もだんだん印象が薄れ、楽しみにすることも少なくなった。だが、今年の中秋節は違っていた。日本の国立天文台が早くから、6年ぶりで中秋の月と満月が重なると発表したのである!いつも中国語が難しいと嘆いている日本のおばあちゃんたちまで、嬉しそうに李白の詩「頭を挙げて名月を望み、頭を低れて故郷を思う」や、杜甫の詩「月は今夜より白し、月はこれ故郷の明なり」を口ずさんでいるのを聞くと、急に故郷が懐かしくなってくる。


名月がしだいに雲の切れ目から顔を出し、雲の端の輪郭が夢のように浮かび上がる。都市にいるというのに、田舎の小道のように虫の声が響きわたり、まるで中秋節になったことを全力で伝えているようだ。巨大な月餅がテレビの画面いっぱいに映し出されている。横浜中華街で特別に作られた直径1メートル、重さ60キロの巨大月餅が切り分けられ、やってきた300人のお客さんたちに分けられているのだ。その場面はまばゆいほど壮観だった。


故郷の中秋節の変わったニュースも、もちろん日本の記者の鋭敏な嗅覚を逃れることはできない。中国の新聞、「南京晨報」が、中秋節のための世界初の「月夜の新聞」を発行したのだ。この「月夜の新聞」は夜でも煌々と光るので、壁に貼っておくと、屋内にも屋外にも月があって、二つの月を楽しめる。経済の発展によって文化的な生活が満たされるだけでなく、美しさに対する要求も高まっているのであろう。この奇想天外なアイデアに日本人は、月見のお団子を食べるより風情があると言って感心している。


だが今年の中秋節は、地球という星にとってはさらに特別な意味がある。つい先日、9.11同時多発テロ事件十周年であり、3.11東北大震災の半年目に当たる日を迎え、悲しい気持ちがよみがえったばかりである。そこで、杯を挙げて名月に向かい、世界の平和と平穏な生活を祈りたいと思う。さらに今年の中秋節は、私個人の人生にとっても特別な意味を併せ持つ。23年前の今日、私はバックパックを背負って、中国に別れを告げて日本に渡り、自分の青春の年月を日本に捧げ、第二の故郷をこの地に得ることができたのである。


澄み切った満月は、いつの間にか静かに高い空に上っていた。見上げてみると、今年の名月は確かにいつもと違う。張九齢の「海上生名月、天涯共此時」(海の上の月を眺め、離れている人と共有している)という雄大さだけでなく、蘇東坡の「但願人長久、千里共嬋娟」(人々が健康に、千里を離れていても共に過ごすことを願う)という深い感動を湛えているようである。


お月見特集 http://allabout.co.jp/special/sp_moon/