黒っぽい机。開かれたノート。窓外からは弱い光が差し込んで、机の上で熟睡している少女の顔を照らしている。手の下には細長い鉛筆。しわの寄ったノートに、大き目の子どもらしい文字が並んでいる。「ままへ。いきてるといいね。おげんきですか。」・・・東北大震災後の岩手県で、津波の中から奇跡的に救助された4歳の愛海(まなみ)ちゃん。お父さんとお母さんと妹を亡くし、一人ぼっちになった。文字を覚えたばかりの彼女は、一字一字全力で書いて、やがて疲れ果てて机につっぷして眠ってしまったのだ・・・。
――東京国際フォーラム。「3.11ユニセフ東日本大震災報告写真展」の大きな写真が、多くの来場者の涙を誘っている。25の新聞社や通信社と21人のカメラマンが、ユニセフの下に集まり、カメラで記録した真実によって、我々を半年前の大地震の瞬間に引き戻す。東京から300キロ離れた場所の音、雰囲気、現場の焦り、悲しみなどが一挙に押し寄せてくる。
ニューヨークのユニセフ本部は、約半世紀ぶりに日本に対して支援を行った。あの悲しいできごと以来、日本ユニセフ協会のメンバーは手分けして被災地に赴き、子どもたちの健康を守り、教育を一日も早く回復し、心のケアを行うための救援活動に邁進している。そして今、同業社やメディアの枠を超えて、大手新聞社やカメラマンたちが、空前の国難の中で団結し、これまでなかったような奇跡が起こっているのだ。
香港出身で、自ら被災地に赴いて子どもたちと喜びや悲しみを共有した日本ユニセフ協会大使で歌手のアグネス・チャンさんは、強い思いを込めて語った。今回の震災で被災した人々の中にも、救助のために駆けつけた人々の中にも、多くの在日華人がいた、彼らはそれぞれの運命を日本と深く結びつけている、今回の試練を経てきっとすべての人がもっと強くなれるだろう、と。・・・あと二日で、東日本大震災から半年になる。愛海ちゃんの穏やかな寝顔を眺めながら、強い使命感が自分の中に湧き上がるのを感じていた。 「3.11ユニセフ東日本大震災報告写真展」(入場無料)東京国際フォーラムロビーギャラリー 9月5日(月)~11日(日)9:00~17:00
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