新感覚のギャザリングアート | 「週刊・東京流行通訊」公式ブログ

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ギャザリングアートとは、作品のテーマに応じて必要な画像や写真(主に既存の印刷物)を大量に集め、それらの画像を切り貼りすることによって、モチーフを再定義しながら描いていくスタイル。アーティストのウタマロケンジ(市川健治)さんは、1990年にこのスタイルを生み出して以来、数多くの作品を発表している。


市川健治さんは1967年生まれで、武蔵野美術大学大学院を修了。1990年に日本グラフィック展の特選に入賞、91年には現代日本美術展に入選、96年には日本ビジュアル・アート展の金賞を獲得。また、岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展には3度の入選を果たし、特別賞を受賞するなど国内外の様々なコンペティションで多くの賞を受賞しているほか、数多くの個展の実績をもつ。


市川さんの作品に使われている写真や印刷物が記録しているものは、ある場所に確かに存在した時間である。切り取られたピクセルの世界は小さなかけらだが、そこには物語が確実に含まれている。完成した作品を鑑賞する時に、焦点を細部から全体へと移すと、一つ一つのピクセルの内容に惑わされながらも、不思議な存在感を持った新しい画面が浮かび上がる。そしてそれは、「絵数的秩序の偶然」によって、時としてアーティスト本人の想像をも超えたものになるという。


ギャザリングアートが無機的なデジタルアートに見えるという人もいるだろう。一見、パソコンで加工したトリックアートのようにも見える。確かに彼の創作プロセスは、ひたすら写真を切って貼り付けることだが、どの部分を切ってどのように貼り付けるかを頭の中で判断して手作業で行っているのだ。プランニングも切り抜き作業も、誤差があれば思い通りの作品にはならない。また、日本の優秀な印刷技術がなければ、こうした作品を作り出すことはできない。ギャザリングアートの作品を見るとき、その表現の「手法」と「内容」を個別に見るだけでなく、それらの不可分な関係性に注目すれば、作者のより深い意図を読み解くことができるだろう。

写真提供:ウタマロケンジ(市川健治)

ギャザリングアート http://www.gathering-art.com/