見本の世界 | 「週刊・東京流行通訊」公式ブログ

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東京に暮らす中国人が見た、リアルタイムのこの国のすべて・・・

私が初めて「見本」という名詞を耳にしたのは、子供の頃に祖父の口から出た言葉でした。その時、祖父は台湾語の発音で「見本」と言ったのですが、祖父は日本統治時代に日本の教育を受けていたので、祖父が言っているのは日本語に違いないと私は漠然と気づいていました。その後、成長して日本語に接したり日本に行ったりするようになって、「見本」がサンプルという意味であるのを理解しました。


この見本というものは、本当に面白いと思います。最初はきっと、商売をする人が発明したものなのでしょうね。お客さんが自分の想像力に頼らなくても、商品の実際の外観を直接的に目で見ることができるというのは、確かに素晴らしいことです。ギフトボックスやお弁当を買おうと思っても、蓋を開けるまで何が入っているか分からないのでは、何となく心配ですものね。


日本のレストランに食事に行ったことがある方なら、店に入る前に、本物そっくりに作られたたくさんの料理の模型に目を見張ったことがあるでしょう。通りすがりであっても「うわ~、この模型本物そっくり!」とショーケースに引きつけられて、指の跡をつけるだけでなく、よだれまで垂れてきてしまいます。テレビチャンピオンという番組で、見本を作る人々の素晴らしい技術を見たことがありますが、材料を熱い湯の中に入れた後、さっと手でそれをつかみ、2回ほどひねったらたちまちキャベツの葉ができあがったのです。それが冷えたら、包丁で千切りにするのですが、包丁の使い方が実際の料理とまったく同じで、食べ物が化学原料から作られたというだけの違いなのでした。この見本の迫真度は95パーセントぐらいで、そのレベルの高さに敬服した私は、「五体投地」したい気分でした。


私が見るのが大好きな見本は食べ物の模型ばかりではなく、大型のモデルルームや、ビーズ材料の作品見本なども、見ているととても楽しく、明るい気分になってきます。また、見本は人工的に作られたものなので、保存期限についてももちろん無期限です。私は日本に何度も行きましたが、日本は本当にその名に恥じない「見本の世界」だと思います。どこへ行っても、何をする場合にも、必ず見本が存在するのです。


ちょっと誇張して言うと、日本人の人生にも、各段階において模倣できる、先人や先輩が残してきたたくさんの「見本」があります。「見本」があればそれを参考にし、着実にものごとを行うことができますが、驚きや喜びは少なくなるでしょう。しかし1人の消費者としては、綺麗な「見本」を楽しむことは、やはり視覚的に大きな喜びです!そうではありませんか?

PHOTO BY 哈日杏子

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