顔面コラージュという新しい分野のアート作品をご存知の方はまだ少ないかもしれない。しかし一度その作品を目にすれば、きっと心を打たれるに違いない。「いろんな顔面写真をビリビリ破いて、ぐちゃぐちゃに組み合わせたら、とても面白い顔になったんです。目などのパーツを貼るときに、位置が1mmズレただけで全く違う表情になるんですよ。」顔面コラージュ作家の木村タカヒロ氏は、顔面コラージュの魅力についてこう語る。
木村氏は、渋谷のパルコギャラリーで開催された「Faceful」など、数々の個展を開く一方、フジテレビ系で放送中のバラエティー番組「ザ・ベストハウス123」のオープニングアニメーションなども手がけている。アニメーション分野に進出して以来、自身の運営するサイト「KIMSNAKE」は、Flashアニメファンの間でその名を轟かしている。ペインティングで顔面画を描き始めた木村氏は、たくさん創作するうちに、パターン化に悩まされ、どれも同じような表情に見えてしまい、手描きでは表現することの出来ないフェイスラインや五官パーツの組み合わせを求めて、コラージュ製作を始めた。
1965年生まれの木村氏は、セツ・モードセミナー卒業後、1990年より、人間の顔面をメインモチーフに多彩な表現法を駆使して独自の世界を展開している。1999年の歌って踊るバーチャルタレント集団「キムスネイク」の誕生とともに、コラージュによる斬新アニメーションで活動の幅を広げた。
「もっとすごい顔」「もっと面白い顔」を追求し、10月から3度に渡って開催された個展は、木村氏が「自身の原点に立ち返る」というテーマに挑んだものだった。全ての作品が新作のコラージュだったことについて木村氏は、「創発の快楽であり、自分の内側を映す鏡であり、森羅万象の集約」と表現した。見るものも自らの根源を突き動かされるような作品からは、木村氏がさらなる創造の高みに私たちをいざなってくれるに違いないと感じることが出来る。
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