11月から始まるタイの2学期には、さまざまな全国コンテストがある。

 

演劇、ダンス、吹奏楽、バンド音楽、各種スポーツ、フルーツカービングなどの芸術系、そして外国語。

 

外国語の中心はもちろん英語だが、中国語や日本語などのコンテストもある。

 

そのなかでも、花形種目はスピーチコンテストだが、そのほかにもストーリーテリング、語彙力、辞書引き、リスニング&ドロウイング、絵を見て話を作るものなど、たくさんの競技がある。

 

日本語は中学生の部と高校生の部のスピーチコンテストがあるが、タイの教育省主催の大会とは別に、国際交流基金が中心になって行っている日本語コンテストもある。

 

残念ながら、僕が赴任した学校は日本語教育の歴史が浅く、そうしたコンテストの情報がほとんど入ってこない状態だった。

 

2学期が始まってから、僕は初めてコンテストの話を聞き、日本語スピーチコンテストに出場する生徒の指導をしてほしいと頼まれた。

 

タイ人の先生が選んだ生徒は、たしかに賢そうな子だったが、モチベーションが低く、あまり指導のしがいがなかった。

 

それに地区予選大会まで1カ月もない状態でできることは、スピーチ原稿に手を加え、それを丸暗記させることぐらいしかなかった。

 

二人とも運よく地区予選を突破し、東北地方大会まで行くことができたが、全国大会出場には遠く及ばなかった。

 

当然の結果だった。

 

スピーチ原稿を丸暗記しているだけで、その内容を語っているわけではないのだから。

 

スピーチのあとに審査員から2つ質問があり、質問への回答も得点に加味されるから、その子の持つ日本語能力が最終的にはものを言う。

 

コンテストの上位校は、だいたい日本人教師のいる学校だった。

 

僕は、コンテストで全国大会出場を狙える学校にいる日本人教師を羨ましく思った。

 

自分も、生徒を全国大会に連れて行って、周りから称賛されたいと思った。

 

でも、僕が赴任にしたド田舎の学校と都市部の進学校とでは、日本語教育に使える予算も、生徒の学力も大きく違った。

 

そのなかで僕にできることといえば、来年度に向けて優秀な生徒を育てていくことしかなかった。