タイ人は滅多に怒らない。
この点に関しては、怒ってばかりの日本人よりはるかに高尚に感じる。
なぜ怒らないのかというと、怒ることは恥ずかしいことだと思っているからだ。
タイ人は、人前で怒りを露わにすることは「自分は器の小さい人間です」と周囲に言っているようなものだと考えている。
だから、たとえ腹の立つようなことがあったとしても、憤慨して大声を出したりせず、穏やかに振る舞う。
女性が、親しい人の前で収まらない感情をぶちまけている光景を目にすることはある。
男性でも、仲のいい人と酒を交わしながら、何やかやと文句をこぼすことはある。
けれど、ムカっときて相手を罵ったり、自分より立場の弱い相手を責めたりすることはほとんどない。
日本や他の先進諸国では、サービスを提供する側に対して、サービスを受ける側の人間が偉そうに責任追及したり、謝罪を求めたりする場面をしばしば目にする。
自分が何様だと思っているのかと疑問に思うこともある。
サービスを受けてお金を払うことがそんなに偉いことなのか。
話が少し逸れてしまったが、タイ人はそういうことをしない。
バスが故障して目的地への到着が1時間遅れたとしても、乗客は誰一人として怒り出すことはないし、バスの運転手が乗客に謝罪することもない。
スーパーやデパートで買い物をして、それが不良品だったとしても、クレームをつける人はいない。
また、飲食店で高くて不味いものを出されたとしても、食えなければ残して、客は文句を言わずお代を払う。
心の中で「もう二度と食うまい」と思っていても、それを口に出さずに微笑んでいるのがタイ人である。
より良いサービスを提供しようとするかどうかは提供する側の問題であり、サービスを受ける側が干渉することではない。
気に入らなければ、よそへ行く。
それだけだ。
だから、タイでのビジネスは、ある意味シビアだとも言える。
みんな微笑んでいるばかりで、腹の底ではどう思っているかわからない。
「微笑みの国」とは、よく言ったものだと思う。
でも、僕が日本に帰ってきて思うことは、日本人はよく人前で怒るということだ。
よく怒って他人を責める人は、「自分は器の小さい人間です」と周囲に知らせていると思ってほしい。