観桜会のご案内
本日はようこそご参拝くださいました。
境内は、社殿を包むように桜が咲き、雅楽の音色や舞とともに、古代から続く「花をめでる心」が立ち上がってきます。
令和八年の観桜会では、書・舞・管絃・舞楽が一つながりとなり、「春を寿ぐひととき」を皆さまと分かち合います。
穏やかな天候と桜に恵まれ奉納できることに感謝いたします。
12:45 修祓
奉納者は神前でお祓いを受けてから奉納いたします。
オープニング
13:00 書道パフォーマンス 田中美琉氏
書と雅楽が出会うひととき
オープニングを飾るのはこの方。
恒例の田中美琉氏による書道パフォーマンスです。
毎度新たなテーマをもとに書が揮毫されます。
境内に流れる雅楽の調べに合わせて、春風に揺れる桜を感じながら、その場で生まれる一文字・一行は、まさに「今ここ」にしか現れない一期一会の作品となります。
書き上げられた作品は、その年の観桜会の象徴として、皆さまの記憶に残ることでしょう。
13:15 祭祀舞 浦安の舞
神前に捧げる、清らかな舞
浦安の舞(うらやすのまい)は、国家安泰を願い作られた舞です。
1933年(昭和8年)の昭和天皇御製
天地(あめつち)の神にぞ祈る朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を
天地(あめつち)の神にぞ祈る朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を
神々に波のたたぬ穏やかな平安を祈る御歌に合わせて舞われる、清らかな祭祀舞です。
観桜会のはじまりに、この浦安の舞を奉奏することで、日々の感謝と祈りを捧げます。
地元小学生の奉納で6年生は今回の奉納で卒業となります。
13:30 管絃① 平調
越殿楽/朗詠「春過」/鶏徳
越殿楽(えてんらく)
もっとも親しまれてきた雅楽の名曲
越殿楽は、「越天楽」とも書かれ、雅楽の中でも最もよく知られた唐楽の一曲です。
今回演奏するのは平調(ひょうじょう)で、どこか民謡のような親しみやすい旋律が特徴です。
古くから法要や宮中の遊びなど、さまざまな場で奏されてきた曲で、のちには歌詞を伴う「越天楽今様」としても広まり、民謡「黒田節」の源流ともいわれます。
ゆったりとした四拍子の中に、繰り返し現れる印象的なフレーズを、桜の景色とともに味わっていただければと思います。
朗詠「春過」(ろうえい はるすぎ)
言葉そのものを味わう、声の芸能
朗詠は、漢詩や和歌を旋律にのせてうたい上げる、声の芸能です。
「春過」は、春が過ぎゆくさまを惜しみながら、その美しさを言葉に託した一篇で、静かな情感と余韻が魅力です。
器楽の華やかさとは異なり、声と言葉の力だけで情景を立ち上げていくため、耳を澄ますほどに、古の人々が感じた「春の終わり」の気配が胸に迫ってきます。
春過夏闌ヌ 袁司徒カ家ノ雪路達シヌラシ 旦ニハ南暮ニハ北 鄭太尉ガ渓ノ風人ニシラレタリ
(はるすぎなつたけぬ えんしとがいえのゆきみちたつしぬらし あしたにはみなみゆうべにはきた ていたいいがたにのかぜひとにしられたり)
鶏徳(けいとく)
軽やかさの中に品格をそなえた管絃曲
鶏徳は、唐楽系の曲で、もともとは舞を伴う楽として伝わりますが、現在は管絃としても演奏されます。
曲名の「鶏」は、夜明けを告げる鶏のイメージとも結びつき、どこか軽やかで、きびきびとした印象を与える旋律が特徴です。
越殿楽や朗詠と並べて聴くことで、同じ雅楽の中にも、曲ごとにまったく違う表情があることを感じていただけると思います。
14:30 管絃② 太食調
長慶子/輪鼓褌脱
長慶子(ちょうげいし)
太食調を代表する、華やかな名曲
長慶子は、太食調(たいじきちょう)を代表する名曲で、雅楽の演奏会でもたびたび取り上げられる華やかな管絃曲です。
ゆるやかな導入から次第に勢いを増し、終盤に向かって高揚していく構成は、聴く人の心を自然と引き上げていきます。
観桜会では、この後の舞楽へとつながる「橋渡し」のような役割も担い、春の喜びと祝意を音楽で表現します。
輪鼓褌脱(りんここたつ)
打物が活躍する、リズムの面白さに満ちた曲
輪鼓褌脱は、太食調の曲で、特に打楽器の活躍が印象的な一曲です。
曲名に「輪鼓」とあるように、鼓のリズムが全体を牽引し、複雑な拍の組み合わせが独特の躍動感を生み出します。
長慶子の華やかさと対照的に、よりリズミカルで遊び心のある表情を持っており、同じ太食調の中での色合いの違いを楽しんでいただけます。
15:30 舞楽① 左方 打毬楽(たぎゅうらく)
打毬楽は、唐楽系・太食調の左方舞で、もとは胡国で行われた「馬上から毬を打つ遊び」に由来すると伝えられます。
いわゆる現代「ポロ」的なものです。
四人の舞人が、毬杖を思わせる所作を交えながら舞う姿は、勇ましさと優雅さが同居し、古代の競技と儀礼が一体となった世界を感じさせます。
桜の下で舞われる打毬楽は、春の高揚感と相まって、観る人の心を大きく開いてくれることでしょう。
16:30 舞楽② 右方 貴徳(きとく)
貴徳は、右方(高麗楽系)の舞で、左方舞の打毬楽と対をなすように番に配置されています。
右方舞らしい、やや控えめでありながらも、細やかな身振りや足運びに気品が宿る舞で、衣装の色合いも左方とは異なる趣を見せます。
同じ舞楽でも、左方と右方で音楽・舞ぶり・雰囲気がどのように違うのか、見比べていただくと、雅楽・舞楽の奥行きが一層感じられます。
16:55 長慶子三度拍子(さんどびょうし)
最後はふたたび長慶子が登場し「三度拍子」で締めくくります。
実は、平調鶏徳、太食長慶子、三度拍子は最初のフレーズが同じです。
しかしながら全て拍子が違うので吹き分けることが今回の挑戦です。
三度拍子は、打物が「コン・コン・ズン・ドオ」三度、力強く拍子を打つ所作で、神事や演奏会の「お開き」を告げる合図ともなります。
観桜会の一日をともに過ごした皆さまと、長慶子の余韻と三度の拍子をもって、「今年の春の観桜会が無事におさまったこと」を神さまにご報告し、感謝を捧げます。
境内の桜は、毎年同じ場所に咲きながら、常に違う表情を見せてくれます。
雅楽や舞楽もまた、同じ曲であっても、その日その時の空気や、集う人の心によって、響き方が変わっていきます。
令和8年の観桜会が、皆さまにとって春の一日を、ゆっくりと感じていただき、花より団子ならぬ「花より雅楽」の時間となりましたら幸いです。
