観月会「雅楽奉納演奏会」にお越しいただき誠にありがとうございます。
本日の奉納演奏において、MCより説明もありましたが、馴染みの無い言葉ばかりです。
あらためて、当日演奏した演目の詳細を説明したいと思います。
雅楽演奏の演目は以下の通りです。
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13:00 [祭祀舞]浦安の舞
13:30 [管弦]平調音取・越殿楽・老君子
[大和歌]田歌
14:45 [書道パフォーマンス]
15:00 [管弦]盤渉調音取・青海波
[朗詠]紅葉
[管弦]越殿楽残楽三返
16:00 [舞楽]還城楽(左方)
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◆祭祀舞『浦安の舞』
うらやすのまい
浦安の舞は、1940年(昭和15年)11月10日に開かれた「皇紀二千六百年奉祝会」に合わせ、立案されたものです。
1940年は、初めての天皇である神武天皇から数える「皇紀」において、2,600年というおめでたい年でした。
当時の宮内省楽部の楽長が全国の神社に伝わる神楽舞を基に作曲作舞した神楽舞です。
神楽の歌詞は1933年(昭和8年)の昭和天皇御製
天地(あめつち)の
神にぞ祈る朝なぎの
海のごとくに 波たたぬ世を
が歌詞になっています。
4人舞で扇舞と鈴舞に分かれます。
今年小学校を卒業した地元の子供たちと今年から参加した小学4年生が一緒に舞ます。
辺境な神社で人手が少なくても歌舞の奉納が行われるよう作られており、最小の人数では「歌(拍子)、舞人」の2人でも可能としております。
よほど大きな神社や雅楽組織がないと、演奏に合わせて舞う機会は少ないです。
舞った子供たちは当たり前のように感じるかもしれませんが、実は、奏楽の中で舞えるのはとても贅沢な環境なんです。
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◆管弦 平調
ひょうぢょう
雅楽の中で管弦は、6種類の調子に分けられ楽器のみで奏されます。
「りくちょうし」と呼ばれ各調子は音階の種類や主要音の音高によって、壱越調(いちこつちょう)、平調(ひょうぢょう)、太食調(たいしきちょう)、双調(そうぢょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)という名称がつけられており、このうち壱越調、双調、太食調の3調子は呂旋(りょせん)、また平調、黄鐘調、盤渉調の3調子は律旋(りっせん)に属します。
雅楽を初めて習う時に練習する曲は、平調が多いのでは無いでしょうか。
◆平調『音取』
ひょうじょう ねとり
短い音色を合わせて奏され、これから演奏する曲の調子を知らせます。
各楽器の主奏者によって奏され、楽器の音合わせの役割も兼ねています。
新しい調子を奏する際は必ず音取を奏します。
「打ち合わせ」など雅楽の言葉が日常において結構使われています。
◆『越殿楽』
えてんらく
舞は伴わず,管弦の形でのみ演奏され雅楽の中で最も演奏される機会の多い曲です。
平調 (ひょうぢょう) のものと,黄鐘 (おうしき) 調のものと,盤渉 (ばんしき) 調のものの3種があります。3種の越天楽のうち、盤渉調のものが原曲で、他の2曲はそれを移調したものであるが、平調が原曲という説もあります。
この後、盤渉調の越殿楽も残り楽で奏されますので、移調してどれだけ変化しているか聞き比べてみてください。
◆『老君子』
ろうくんし
平調に属する小曲で管弦のみ。
『楽家録』によると、「笛説として、嵯峨天皇隠君子が曲を作ったことから老君子と名付けた。隠君子は、嵯峨天皇が太子のままで帝位に登らず、老人となった。」とあります。
さらに『楽家録』では、早四拍子、早八拍子、早只四拍子の3説あるとされます。
今回は早四拍子で演奏されます。
たうた
国風歌舞(くにぶりのうたまい)は他の雅楽曲と違い、外来音楽の影響をうける以前から日本にあった古来の歌舞(うたまい)です。
「古事記」や「日本書紀」などの神話に基づくものが多く、神道や皇室に深く関わる歌や舞で構成されているのが特徴です。
雅楽の中でも目にすることが少なく、なかには天皇の即位式でしか演奏されないといった特殊なものまであります。
この田歌はその中でも大和歌(やまとうた)と言われかつては大嘗祭(だいじょうさい・天皇の御代替りにおいて行われる秋の収穫の重儀)でも歌われましたが近代以降奏される機会がないとのことです。
また田舞として歌に合わせた舞があったようです。
予祝(よしゅく)の意味合いを持つ曲です。
(予祝とは「あらかじめ祝う」こと)
歌詞は以下のとおりです。
破(「みましもしげや」が句頭、以下、斉唱。)
汝(みまし)も繁(しげ)や 若苗(わかなへ)取る手やは 白玉(しらたま)取る手こそ 白玉勿(な)揺(ゆら)や
急(各「や」が句頭、以下、斉唱。
「や 白い花や」は答句。)
や 富草(とみくさ)の花や
や 白(すら)い花や
や 酒納(な)へ粉(こ)納へ
や 白(すら)い花や
や 取る麿も安(やすら)ら
や 白(すら)い花や
や 酒納え粉納へ
や 白(すら)い花や
や 引く麿も安ら
や 白(すら)い花や
や 磐(いわ)占めて千代(ふ)る神の
や 白(すら)い花や
や 夫婦(みよと)にせんや
や 白(すら)い花や
今年は数度となく演奏してきた田歌ですが、なかなか他の雅楽演奏会では聞く機会のない珍しい曲なんです。
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◆管弦 盤渉調
◆『青海波』
せいがいは
曲名は西域の青海(せいかい)地方(中国青海省)の地名によるとされ『輪台』と同じく伝来当時は平調(ひょうじょう)であったが、仁明(にんみょう)天皇(在位833~850)のとき、勅命により盤渉(ばんしき)調に改作されたと伝わります。
現在は、平調は無く、盤渉調、黄鐘調に残ります。
「源氏物語」紅葉賀の中では、この曲を用いる舞楽として演奏されており、源氏の君が頭中将と二人で舞い、そのひかり輝く美しさに皆が涙するシーンは有名です。
今回は管弦ですので演奏だけですが、大変美しい旋律を奏でる曲で吹き手に技量が求められる曲です。
源氏の君と頭中将の舞い比べを思い描くことができるでしょうか。
◆朗詠 『紅葉』
ろうえい こうよう
朗詠とは、雅楽のジャンルの一つで、謡物と呼ばれる声楽曲のことです。
楽曲は独特の抑揚をもった、しっとりとした雅楽風の旋律で、漢詩にそのメロディーをのせて謡うのが朗詠です。
今回は季節に合わせた曲「紅葉こうよう」
ちょうど紫式部の描いた世界とつながる演目です。
紅葉又紅葉 こうようまたこうよう
連峯之嵐浅深 れんぽうのあらしせんしん
蘆花又蘆花 ろかまたろか
斜岸之雪遠近 しゃがんのゆきえんきん
暑い日が続きますのであまり秋の感じがしないですが。
奏楽で秋を感じてください。
◆『越殿楽残楽三返』
えてんらくのこりがくさんべん
平調で説明した越殿楽です。
残楽三返とは、管弦で行われる変奏の一種で、合奏楽器のなかで普段目立たない存在である箏の特別の技巧を聞かせるために作られた演奏法です。
打楽器と笙 (しょう) と笛は曲の途中で次第に演奏をやめ、さらに曲を反復し、その間に篳篥 (ひちりき) と琵琶もなるべく旋律の断片を奏することによって、箏の細かい弾奏を引立てます。
この方法は御遊 (ぎょゆう) において発展した演奏形式であり、元来多分に即興的要素を含んでいたようですが今日ではだいたい固定され、楽曲を3回反復する「残楽三返 (さんべん) 」が一般的に行われる形です。
第1回目は普通の管弦のやり方で全員が奏し,2回目は打楽器,笙,笛の順に演奏をやめ,3回目は琵琶と箏の弾奏に篳篥の音頭がきれぎれに旋律の断片を吹く。
『越天楽 (えてんらく) 』『胡飲酒 (こんじゅ) 』『陪臚 (ばいろ) 』の曲で行われ、四天王寺では「ざんがく」と呼ばれます。
◆舞楽『還城楽』左方
げんじょうらく
見蛇楽・還京楽ともいう。
由来としては、唐の玄宗が韋皇后を誅して、夜半に城に帰還する姿を舞楽にしたものとも、蛇を好んで食べる胡国の人が蛇を見つけて喜んだ様を舞にしたものとも伝えられている。
ちなみに春の観桜会では、同じ還城楽でも右方・八多良拍子で舞い今回は左方・只拍子です。
春に奏した演者さんはついつい間違えそうになってしまいます。
今年は乱声に慣れてもらおうと演目を続けました。
陵王・還城楽(右方)・還城楽(左方)と龍笛には吹きごたえのある演目です。
舞の次第は、
①「小乱声 (こらんじょう) 」
ソロの笛によるの前奏
②「陵王乱声(りょうおうらんじょう)」
太鼓と若干の笛によるを伴奏に面をつけ、裲襠 (りょうとう) 装束の舞人が登場。
龍笛は3段まで吹き舞人は蛇を見つけ捕まえます。
③ 「還城楽音取 (ねとり)」
当曲に控える音で笙、篳篥、龍笛が合わせて奏します。
④「当曲 (太食調 還城楽の舞楽吹き) 」
舞を流麗にしかも活発に舞う。
蛇を取った喜びを表す。
⑤「安摩乱声(あまらんじょう)」
伴奏に退場の舞を舞う。
書道パフォーマンス
演者 田中美琉(たなかみる)
現在大学生になり活躍の場を広げています。
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手力雅楽会は新しいメンバーを募集中です✨
興味のある方は担当(禰宜ねぎ)にお気軽にお声かけください。
長文ご覧いただきましてありがとうございます。