毎日のラブラブな会話は、二人にとってほぼ日常となっていました。T君は仕事の合間に電話やメールを入れてくれて、私もそれを心待ちにしながらチャットで稼いで、T君から電話があれば最優先して、チャットのお仕事もそっちのけ。私の生活は恋愛・・・いや、T君を中心に回ってました。
知り合って1年ほど過ぎた頃、T君から思いもよらぬ言葉が出ました。
「今度の連休、東京に行かなきゃいけない用があるんだ。
その時に少しだけでいいから逢わない?」
1年近くも恋焦がれて繋がってきた人・・・。運命の相手だと互いに信じてる仲・・・。二人は恋人同士のように、いや、それ以上に心の深遠から惹かれ合っていて、逢いたい気持ちは当然、私も同じでした。T君よりも私の方が強くそれを望んでいたと思います。
でも、私は既知の通り醜い容姿。
T君ほど器量のいい男性とは不釣合いなブス。本当は恋愛する事さえ許されないような女。T君は今まで私の容姿の事はほとんど聞いてこなかったけど、だから余計に私の実物を見れば幻滅して、きっとそのまま疎遠になって、心の支えであるT君を永遠に失ってしまう・・・。
逢えないもどかしさよりも、私は彼を永遠に失う事の方が遥かに恐ろしくて、彼の誘いを素直に受け入れる事が出来ませんでした。
その気持ちをT君に伝えようと思ったけれど、もしもブスだと知られてしまった場合、会っていなくてもT君の気持ちが変わってしまうと思って、私は遠回しに断りました。
「私もT君に逢いたいよ。
でも、私はT君が思ってるほど可愛い女じゃないよ。
地味だし、美人な方じゃないと思うから、きっと幻滅するよ」
「顔なんて、俺にとってはどうでもいい事なんだよ。
俺が顔で選ぶ男なら、会った事も無い、顔も知らない綾香に
ここまで真剣に入れ込んでなかったし。
俺は綾香がどんな外見でも気にしないから」
正直に自分の醜さを伝える事が出来ませんでした。そんな事をすれば嫌われる・・・。真実を伝える勇気が無かったんです。でも、T君は続けて言いました。
「もしも自分に自身が持てないなら、俺が変えてやる。
俺だけが知ってる誰よりも綺麗な綾香の心は、
どれだけお金を積んでも手に入るものじゃない。
顔は整形でいくらでも上を望めるけど、心は違う。
俺は綾香の本当の価値を知ってるから、
外見なんかで気持ちが変わる事は絶対に無いよ。
そんな安っぽい気持ちだと蔑まないでほしい」
T君の気持ちは私が考えてる以上に真剣なもので、私と違って迷いが無く、真っ直ぐなんだと感じました。それを聞いた以上、私はT君に嫌われる事を考えないようにして、逢う事を決意しました。
T君と逢う約束の1週間前。
既にT君は東京に来ていました。
「今、綾香と同じ街にいるよ。
会社が宿代出してくれるから、好きなホテルが選べたんだけど、
綾香が住んでる場所の近くにしたんだ。
来週の今日は、俺達一緒にいるんだよね」
「ホテルはどこなの?○○駅の近く?」
「○○駅の西側の、ローソンの近くにある、
×××っていう古いビジネスホテルだよ」
T君の泊まっていたホテルは・・・私のマンションの裏でした。
大好きなT君が、私のすぐ近くまで来てる・・・!!
逢おうと思えば1分で逢いに行ける・・・!!
そんな距離にいるんだ・・・!!
私の胸は高鳴って、気持ちも更に膨れ上がりました。
「綾香は今、家にいるの?」
「うん」
「俺も今、ホテルの部屋にいる。
こうやって話してる電話の声も聞こえそうな距離だよね」
「T君・・・早く逢いたいよ・・・」
「俺もだよ・・・1週間をこんなに長く感じたのは初めてだ」
夜中の電話、なぜか涙が止まりませんでした。
愛し過ぎていて、心がいっぱいいっぱいで、おかしくなってました。