「せっかく教えてもらったんだから、一度くらいやらなきゃ申し訳ないな。」
半分面倒くさく思いながら始めたチャットレディー。
「こんなのやってる時間があるなら掲示板で遊びたい。」
「知らない人とよそよそしい話をするのはつまんない。」
「お金なんかいらないからちょっとやってスグやめよう。」
始めてからもしばらくはそんな事を考えてました。
だって、いつもの掲示板に行けば「綾香」というブランドのような知名度があって、みんなが私と話したくて書き込んでくれるんです。私の一挙一動で掲示板全体の空気が浮いたり沈んだり、まるで私の掌だったんです。
それがチャットレディーの仕事だと、「綾香」だからって特別に扱われる事も無いし、私の影響力なんか全然なくて・・・。正直すごく退屈でした。
話し掛けてくる男はたくさんいました。つまらない会話がやっと終わっても、間髪入れず次の人が話し掛けてきて、また同じようなつまらない会話の繰り返し・・・。
「何歳?学生?」
「彼氏いるの?一人暮らし?」
「携帯のアドレス教えて!電話番号教えて!」
「写メ交換できる?」
「暇してるの?今日会わない?」
「エッチな話はOK?」
どの男も同じような事を聞いてきて、私の返事にも同じような反応。そのうち相手にするのも馬鹿馬鹿しくなって、ほんの数時間でやめてしまいました。くだらない質疑応答ばかりのチャットには馴染めなかったし、やっぱりいつもの掲示板の方が居心地が良いから。
その日の真夜中、いつもの掲示板に書き込んでもほとんど人がいなくて暇になったので、暇つぶしの為にもう一度、チャットレディーの方にログインしました。こっちには時間を持て余した男がたくさんいて、ログインしてすぐに話し掛けられました。
時間が遅かったせいか、この時に話し掛けてきた男達は昼間の男達とは少し違った雰囲気でした。もっとお互いの距離を大事にしてるというか、私に興味を持ってくれてるというか、何となく「話してもいいかな」って思える感じでした。
チャットに夢中になってるといつの間にか朝になっていて、相手の男は会社に行く時間になり、それでチャットを終えました。私も時間を忘れるほど夢中になっていたんだから、すごく楽しかったんです。昼間はあんなに鬱陶しく感じたチャットが楽しくなってしまってて。
私も夜通しチャットしてたので眠くなってきて、寝る前に自分の売り上げを見ようと思いました。別にお金が欲しくて始めたわけではなかったけど、どんなもんなのか気になって。それに、いくらかでもお金が稼げるなら儲けモンだと思って。それで売上確認ページを見てみると・・・
26000円
私は自分の売り上げ金額を見て目を疑いました。
ケタが一つ違うのかと思いました。2万6千円・・・本当に??
「こんな簡単に、しかもネットで楽して稼げる筈がないじゃない。
こうやって表示してるのはダミー。振り込まれるわけないよ。」
そう思いながらも、内心ドキドキしていました。
もし、こんな簡単に稼いだお金が私の物になるなら・・・何に使おう?
でも、あまり期待しても後から凹むだけなのであまり期待はせずに、その日は眠りにつきました。