私の初恋は中学2年の時でした。初恋の相手は同じクラスのK君。お人よしで温厚な性格なので、私に対して露骨に嫌な態度を取ってくる事はありませんでした。周りの男子たちが私を指差して「キモイ」と笑っている時も、彼はそんな話題に加わっていませんでした。
ある時、私は席替えでK君の隣の席になりました。K君は他の男子と違って、私と必要以上に机を離したり、他の人に席を代わるよう頼んだりしませんでした。普通にしてくれていました。私はこんな優しい人が隣の席にいてくれるだけで、とても安らかな気持ちで毎日を過ごす事が出来ました。そして、いつからか私は、K君に心惹かれて行ったのです。
K君を意識しだしてからはもう、些細な事でも舞い上がっていました。K君が私の落とした消しゴムを拾ってくれたり、私の机に飛んできた虫を追い払ってくれたり、そんな小さな出来事で私は幸せを感じて、K君への想いを募らせていきました。
しかし、この初恋は意外な形で終わりを迎えました。
ある朝、私はとても早く学校に着いたので、自分の席に荷物を置いた後、誰もいない教室でこっそり、隣のK君の席に座ってみました。好きな人の席・・・ただ座ってるだけなのに幸せで・・・話し掛ける事も出来ないから、少しでも彼を感じたくて・・・。私はK君の机にうつ伏せて、うっとりしていました。
すると、朝練を終えたバスケ部の女子達が教室へ戻ってきて、悲鳴を上げました。
「イヤーッ!!キモーッ!!K君かわいそー!!」
その言葉を聞いて、私は慌てて自分の席に戻りました。
しばらく経って徐々に人が増えてくると、騒いだバスケ部の女子達が男子達を囲い込んで輪になって、私の方を見ながら何か話してました。
「クレンザーで拭いてもダメだろうな」
「殺菌しなきゃ汚いよ~」
「急にニキビ面になったりして~?」
「K君かわいそー!」
私は自分のうかつな行動を悔やんでました。誰かに見られれば大事になって、この恋だって終わるかも知れないのに・・・。ひやひやしながら黙っていると、ついにK君が登校しました。K君が席に座ろうとすると、その騒がしいグループの人たちが大声でK君に叫びました。
「K君!!座っちゃダメー!!
そこ、さっきゴキが座ってたから!!!
ゴキが机にキスしてたよ!!」
私は初めて自分のあだ名を知りました。
「ゴキ」・・・きっとゴキブリに由来するあだ名です。
私は恐る恐るK君の反応を目で追いました。
優しいK君ならきっと、そんなのは無視すると信じていました。
しかし・・・
「まじかよ・・・誰か机変えて~・・・」
そう言ってK君は教室の隅から除菌用のウェットティッシュを持ち出し、「どの辺?椅子も?」と言いながら、椅子や机を丹念に消毒し始めました。私はあまりのショックで放心状態になってしまいました。
この一件からK君は私を露骨に避けるようになり、完全に嫌われました。
そしてこの時から私は、「二度と恋なんかしない」と心に誓ったのです。