Adieu Romantique No.527
『雨の日にはこんな音楽でも聴いてみよう』
よく冷えたオリジナルのカクテルをテーブルに置いて。軽さの美学とダンディスムを併せ持つ、J・J氏こと、植草甚一のエッセイでもパラパラと読みながら。
☔今日の大阪は朝から晴れている。だけど、夕方くらいからまた雨らしい。ほんとよく降るよな。気圧は下がってくるし、しとしと降り続く感じが何とも鬱陶しくってさ
。今日は七夕だというのに。
梅雨だから仕方がないかと思うけど(もちろん。豪雨によって被災している方にとっては仕方がないじゃ済まないし)、今回は夏本番を前にして、雨の日をできるだけ快適に過ごすための提案。雨の日には素敵な音楽を聴きながら気分を変えて。しっとりと微睡みながら、できれば快適な時間を過ごしたい。
谷川俊太郎が書いた詩を。
『静かな雨の夜に』
静かな雨の夜に
いつまでもこうして坐って居たい
新しい驚きと悲しみが
静かに沈んでゆくのを聞きながら
神を信じないで
神のにおいに甘えながら
はるかな国の街路樹の葉を
拾ったりしながら
過去と未来の幻燈を浴びながら
青い海の上の柔らかなソファを信じながら
そして なによりも
限りなく自分を愛しながら
谷川俊太郎の詩に呼応するように。僕が書いた詩のようなものを。
『静かな雨の夜には』
雨が降っている
空から降る雨は
やがて地面に吸い込まれ
また空から
雨を降らしている
雨は時間軸を持たず
ただ繰り返す
静かな雨の夜には
僕は過去の自分を想像し
未来の自分を懐かしむ
僕が生まれてくる日のことや
大好きな彼女と
初めてKISSを交わす瞬間のことや
僕が死んでしまった日のことを
雨は永久運動のように
始まりも終わりもなく
連続しているのだ
雨が降っている
レインドロップが奏でる
大古の歌を
柔らかなソファに身を沈めながら
僕はただ
耳を澄ましてじっと聴いている
そのようなことで。何だかNHKの、GONTITIのMCによるFM番組『世界の快適音楽セレクション』みたいだけど
。「雨の音楽」をテーマに、敢えてそういう音楽ばかりをセレクトしてみた。
もしかすると聴く人によっては余計にイライラする音楽かも。だけど僕は、雨の日に音量を絞って、小さく流れてくるこの曲が大好き。自分の気分が整えられるような気がするんだ。ミニマル・ミュージックの音楽家、スティーヴ・ライヒ【Steve Reich】の【It's Gonna Rain】。
スウェーデンの知的障害者が集まってシロフォン(木琴)を中心に演奏するグループ、シロフォンオーケストラ【Xylofonorestrern】によるアルバム『Strora Bla』から『Happiness』を。
実力、オリジナリティ共に群を抜くジャズ・シンガー、カサンドラ・ウィルソン【Cassandra Wilson】の2002年のアルバム『Belly For The Sun』から、ザ・バンドの名曲のカヴァー『The Weight』。
アルゼンチン音響派の異才、モノ・フォンタナ【Mono Fontana】の2007年のセカンド・アルバム『cribas』から『Cancion de la Memoria』。遠い記憶の中をさ迷うような曲。
雰囲気を変えて。山下達郎の1979年リリースのアルバム『Moonglow』から『Rainy Walk』。雨の日が楽しくなってくるような曲。
1975年リリースの、シュガーベイブのアルバム『Songs』からフィル・スペクター風に展開する達郎の曲『雨は手のひらにいっぱい』。達郎は雨の日の情景や気分を詩的に表現する達人だと思うな。
これはもう「雨の音楽」の鉄板かな。ジョージ・ロイ・ヒルが1968年に撮ったアメリカン・ニュー・シネマ『明日に向かって撃て！』【Butch Cassidy And The Sundance Kid】の主題歌。バート・バカラックとハル・デヴィッドが書き、B・Jトーマスが歌った『雨にぬれても』【Raindrops Keep Fallin' on My Head】。劇中、ブッチ・キャシディ役のポール・ニューマンとがエッタ・プレース役のキャサリン・ロスが自転車に乗って戯れる印象的なシーンで流れた。
フリー・ジャズのサックス奏者、アーチー・シェップの傑作アルバムのタイトルをそのまま引用したアッティカ・ブルース【Attica Blues】の『Blueprint』。
1994年にリリースされたイギリス・ブリストルのロック・グループ。トリップホップという新しい音楽を切り開いたマッシヴ・アタック【Massive Attack】の1994年のセカンド・アルバムから。シングル・リリースされたタイトル曲『Protection』。因みにボーカルにはエヴリシング・バット・ザ・ガールのトレーシー・ソーンを迎えた。
アメル・ラリュー【Amel Larrieux】のアルバム『Bravebird』から『Sacred』。
テリー・キャリアー【Terry Callier】の1972年のアルバム『Occasional Rain』から『Ordinary Joe』を。
ディアンジェロ【D'Angelo And The Vanguard】の2014年のアルバム『Black Messiah』から『Betray My Heart』。
ボブ・ディラン【Bob Dylan】の、1966年リリースの歴史的名盤『Blonde On Blonde】から『雨の日の女』 【Rainy Day Woman #12&35】。
ボサ・ノヴァのミューズ、ナラ・レオン【Nara Leao】のアルバム『Des Amos Depois』から『Estrada do Sol』。ジャケの写真は雨じゃなく雪だけどね。
ポール・ウィリアムズとロジャー・ニコルズによる、カーペンターズ【Carpenters】の『雨の日と月曜日は』【Rainy Days And Mondays】。ほんと、しっとりした名曲だよね。
最後はビートルズで締め括ろう。1966年にリリースされたシングル『ペイパーバック・ライター』のB面。僕が最も後期ビートルズらしい曲のひとつだと思っている『レイン』【Rain】を。
🌂もう少しで。長かった梅雨が終わる。
それじゃぁ、
今回はこの辺で。
アデュー・ロマンティーク