私は今から40年ほど前にアメリカに移住して、アメリカの文化を好きになったり嫌いになったり繰り返しながら今に至っています。でも、好き嫌いを別にして、アメリカが人類史の中で決定的な役割を演じることが出来た稀な国民であることに異議を挟む人はいないでしょう。人類史に於けるこのアメリカ人の特異性はどこから来るのか。その事について明瞭に見せてくれたのが、私にとっては、2011年9月11日の同時多発テロ事件でした。
アメリカに住んで解ったのですが、アメリカ人て自分の主張最優先で、普段喧嘩ばかりしています。喧嘩請負人の職業である弁護士の数は世界でも抜きん出て多いのです。2005年の資料ですが、人口１０万人に対して日本の弁護士の数は約20人、フランスでは約50人、アメリカでは３６５人です。日本人の約１８倍、フランス人の約７倍、アメリカ人は普段から喧嘩ばかりしていることになります。
そんなアメリカ人が一旦自国に一大事が起こると、彼らは一気に纏まって喧嘩を後回しにできるのです。それが2011年9月11日の同時多発テロでした。過去の真珠湾攻撃の時もそうでした。自国の一大事に国民が纏まることが出来る民度を持っているのです。なるほど、そのような国を他国から攻めるのは大変でしょうし、また、そのような国は世界からも尊敬されるでしょう。
翻って日本はどうだったか。歴史を紐解く前に私が体験した出来事は、1964年の東京オリンピックの時でした。その当時、野党であった社会党は与党の自民党の政策をことごとく反対しておりました。ところが、日本でオリンピックが開催されると決まった途端、社会党はオリンピック開催のために全面協力を始めたのです。これって、一大事の時に普段の経緯を捨てて纏まることが出来るアメリカとよく似ていますね。そう言えば、明治維新前夜の欧米列強からの侵略の危機の時に、薩摩がイギリスの軍隊の援助を退け、江戸幕府がフランスの軍隊の援助を退けました。さらに、勝海舟と西郷隆盛による江戸城開城の無血革命の交渉で日本が欧米列強からの植民地化を防ぐことが出来たのは、一大事の時に一つに纏まることが出来る日本人の文化に寄るところが根本的でしたね。
その日本人の性質は、今でも大災害が起こった時に庶民が秩序整然としていて、暴動など一切起こさないことで、世界中の人々から賞賛の目で見られている事実と同根です。ことが起こった時には互いに協力し合うべきであり、それに乗じて相手の非をあげつらい相手を追い落とすのは悪である。火事場泥棒を最も唾棄すべきことだと考えているのが日本人です。
それとは逆に一大事が起こると、これ幸いと捉えて互いに足の引っ張り合いをする民族もあります。東京オリンピックとは対照的に、1988年のソウル・オリンピックの前夜、韓国野党が世界中に韓国与党の非を訴えて連日デモを起こし、果たしてオリンピックが無事に開催されるのだろうかと世界中の人々に心配させたのなど、特に印象に残りました。
なるほど、アメリカ人と言い日本人と言い、軍事及び経済力という複合力やあるいは経済力だけの単一力で世界を席巻できる底力は、いざという時に纏まることが出来る国民性によるものかと、つくづく思わされたのです。
ところが、最近の日本の出来事に私は何か狂った危険を感じているのです。今回の西日本豪雨大災害の時、今や国を挙げてその被災者を救い、その復興を考えなくてはならない時です。そんな時、今までの日本では野党は日頃の経緯を無視して政府に全面協力を申し出たものでした。そのような状態が起こった時には、混乱時にいつでも起こり得る政府の混乱を非難するのはなくて、その混乱を最小限に防ぐ手立てを提案したものでした。
チャーチルの回顧録『第二次世界大戦』（この作品でノーベル文学賞受賞）の中に、
「私が驚いたのは、ヒトラーの台頭で英国その物の存続が危機に瀕しているその時に、英国の政治家たちは次回の選挙で自分たちの政党が勝てるかどうかに戦々恐々としていたことだ」
との趣旨のことが述べられていました。そんな国は滅んでしまいかねませんね。
私は、現在の日本の野党のやり方に何か日本人的でないものを感じています。日本人て災害が起こった時にそれに乗じて自分たちに有利な行いをしないのではなかったか。この50年で何が起こってしまったのでしょうか。日本人が数百年あるいは千年に渡って築き上げてきた文化はどうなってしまったのでしょうか。日本人が何故世界中の人から尊敬され、驚嘆の眼差しで見られるようになったのかの、その根本のところを脅かすような日本人的らしからのぬ振る舞いを、野党の方達が今回の西日本豪雨災害に乗じてしているように見えて仕様がないのですが、皆さまどう思われますか。