タマの気が蝶に散じ入り夏野原 | texas-no-kumagusuのブログ

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トミオ・ペトロスキー(Tomio Petrosky、日本名:山越富夫)のブログです。

前回紹介したお栄さんは、父親からいつも「おーい、おーい」と呼ばれていたので應爲を号にしたとか。で、このお父さんが桁違いな化物でしたね。私の好きな熊楠を始め、日本には外国でも滅多にいなかったのではないかと思われるような怪物が輩出して来た。変わった国なんですね。
 

話しがそれますが、 勝小吉と麟太郎親子が凄い。麟太郎とは海舟のことです。こきっつぁんの生涯は自著『夢酔独言』に詳しいですが、熊楠の『履歴書』並の驚きの連続でした。この親にしてこの子あり。数日間熱を出して寝込んでいた麟太郎が、突然「一寸出かけてくる」って行き先も言わないでふらふらしながら出て行って、帰って来たのが一年後。咸臨丸でアメリカに行ってたんだそうです。妻の民子さんの激怒たるや、間違っても勝のそばに埋めてくれるな、早世した息子の小鹿の墓に入れてくれと言ってました。 

 

話しをもとに戻して、お栄さんの父さんの北斎の怪物ぶりを紹介します。

 

『富嶽百景』初編跋: 「己(おのれ)六才より物の形状(かたち)を写(うつす)の癖(へき)ありて、半百の此より、数々(しばしば)画図を顕すといへども、七十年前画(ゑが)く所は、実に取るに足るものなし。七十三歳にして、稍(やや)禽獣虫魚の骨格、草木(さうもく)の出生(しゅっしゃう)を悟し得たり。故に八十歳にしては、益々進み、九十歳にして、猶其(なおその)奥意(あうい)を極め、一百歳にして正に神妙ならんか、百有(いう)十歳にしては、一点一格にして生(いけ)るがごとくならん、願くは長寿の君子、予(よ)が言(こと)の妄(もう)ならざるを見たまうべし。画狂老人卍 」 

 

狂老人七十三歳のときの文です。彼は引越し魔で、一生の間に99回引越したそうです。 下の左の句はこの化物の辞世の句です。右の句は私の返しの句です。


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人魂で行く気散じや夏野原     タマの気が蝶に散じ入り夏野原 

 

蛇足:気散じは散歩のこと。ネコの名前タマは人魂や魂から来ていて、日本中にある多摩川や玉川の名も、魂が元だそうです。