この世界ってどう出来ているの?3 マヤ篇 | texas-no-kumagusuのブログ

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トミオ・ペトロスキー(Tomio Petrosky、日本名:山越富夫)のブログです。

今回で「この世界ってどう出来ているの?」の3回目になりますね。インドでも西洋でも日本でも、神様は人を助けてくれるもので、人の助けがなくては遣ってられない神様って聞いたことがないのでないですか。ところがそんな神様がメキシコのマヤにおられるのです。


マヤの伝承によればこの世界はすでに4回の滅亡を繰り返し、現在の世界は5回目だとされています。聞いたところによると、神様は適時に出てきて一先ず秩序立った世界を創るのだそうです。そして満足して睡眠に入る。ところが時間が経って行くうちに段々と秩序が乱れてくる。そして数千年経つと、もうどうしようもないほど乱れた世界になっている。ところが、神様は寝っぱなしで、何もしてくれない。そこで、人間が皆で神様を起こしてやり、乱れた世界を見た神様が慌てて、また秩序ある世界に創り直すのだそうです。そしてまた寝てしまう。そんなことをもう4回も繰り返している。この神様は同じ失敗ばかり繰り返し、経験から全く学習しない神様なのですね。
   

 

  

この世界の見方は、前回紹介したニュートンの考えていた世界と相通じるところが在ります。ニュートンもマヤの人も、世界は決定論的に決まっている無時間的世界ではなくて、過去から未来へと一方向に流れる時間の向きが在ると考えているようです。だから、そのような世界では勿論タイムマシンは作れません。前回紹介したアインシュタインやライプニッツの考えていた一神教的な神様の世界だけがタイムマシンが作れる世界なのです。

 

今様の科学用語でいうと、ニュートンやマヤ人の考える宇宙には、エントロピー増大の法則とか、熱力学第二法則と言う基本原理があって、時間の向きは前進後進が対称ではなくて、放って置いたら秩序が乱れる方向に一方的に流れて行く、と主張しているのですね。

 

 現代物理学の金字塔の一つである「散逸構造の理論」によると、この世界が物理学の法則に従いながら自発的に複雑な構造を創り出すための必要条件の一つが、熱力学第二法則、すなわち時間の向きの対称性の破れがある世界であると言うことが明らかになりました。そんな世界では、色々な物理系が擂った揉んだしながら、偶然が決定的な役割を演じて、収まるところに収まるように構造を進化させながら宇宙を形成して行くと言うのです。

 

その構造は偶然の成り行きで出来上がって来るので、どんな構造が出来るか前もって予測不可能です。だから、そのような世界には、まだ未来は与えられていない。そして、その構成員が自分たちの未来を構築するという創造的な営みに参加できるのです。

 

その反対に、アインシュタインやライプニッツやの考えた世界では、あるときに世界は完璧に創造され、後はその構成員が気付こうが気付くまいが、全てが決まってしまっている世界なのです。だからそのような世界で最も重要な概念は「在る」であり「成る」ではない。勿論そんな世界には創造的な営みはあり得ません。

 

私たちはアインシュタインや、それを勉強して彼の言述を金科玉条の如く主張している多くの物理学者の言うように、「在る」すなわち「存在」の世界に生きているのでしょうか。それともマヤ人たちや、物理学者の中で異端とされている少数の物理学者の言うように、「成る」すならち「変化」する世界に生きているのでしょうか。