韓中THAAD葛藤に再び火がついた…中国が主張した「一限」真実攻防
これまでのTHAAD葛藤は「三不」に集中していた。▼THAADを追加配置しない ▼米国のミサイル防衛システムに参加しない ▼韓日米軍事同盟をしない--という内容だ。
◆「一限」真実攻防の信号弾に?
汪報道官が慶尚北道星州(キョンサンブクド・ソンジュ)の駐韓米軍基地に配備されたTHAADの運用を制限する「一限」を持ち出したのは過去6年間続いてきたTHAAD葛藤戦線の拡張であり真実攻防の信号弾に該当する。三不の場合、韓中両国がその拘束力や性格などを巡って異見を示していたとすると、一限は韓中間の議論そのものがあったかどうかも不明確なためだ。
実際、一限に関連し、韓中間で協議があったのか、あったとすれば協議の結論は何だったのかなどの内容について伝えられたものはない。
中国の官営メディア「環球時報」は2017年韓中外相会談直後に「三不一限」表現を使ったことがあるが、政府次元の公式言及は今回が初めてだ。これに先立ち、大統領職引継ぎ委員会時期にウォン・イルヒ首席副報道官も中国側が文在寅政府に一限を要求したという報道に対して「事実関係確認自体ができない状況」と明らかにしたことがある。
特に一限はすでに配備されたTHAADの運用と直接連動する事案だ。場合によっては中国側が要求してきた「THAAD配備プロセスの即刻中断および関連設備撤去」主張を再び水面上に引き上げる契機になりかねない。このために米国務省は中国の「三不一限」主張が出てきた直後、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)放送を通じて「韓国に対して自衛的防御手段を放棄しろと批判したり圧迫したりするのは不適切だ」という立場を明らかにした。
大統領室高位関係者も11日、「THAADは国民の生命と安全を守るための自衛的手段であり、安保主権状況で決して協議対象になりえない点を明確にする」とし「(既に配備された)THAADは速いスピードで正常化しており、8月末ごろになればほぼ正常化(が完了)するとみている」と述べた。
李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防部長官もこの日の記者懇談会で「在韓米軍THAAD配備問題は韓国の安保のためのもので、安保主権に該当する」とし「中国の反対によってTHAAD正常化政策を変えることはない」と述べた。
◆中国、何を根拠に「一限」を主張しているのか
韓中THAAD葛藤の出発点になった「三不」は2017年10月31日当時、韓国国家安保室の南官杓(ナム・グァンピョ)当時第2次長と中国外交部の孔鉉佑当時部長補佐(次官補)間の協議過程から出た内容だ。当時文在寅政府はTHAAD配備に反発して経済報復措置などを断行した中国を説得するためにTHAAD三不の立場を表明した。ただし、当時韓中両国が発表した報道資料のどこにも「一限」に関連した具体的内容は入っていない。
これに関連して韓国外交部当局者はこの日、「(2017年10月31日の協議結果をまとめた)報道資料には一限について正確に何を指し示すのかを知ることができる内容はない」とし「中国側はTHAADの適用範囲が中国に及んでいると言及し、これに対して韓国側はそうではないと反論する内容が協議結果にも入っているが、(一限は)このような内容を言及するとみられる」と説明した。
一部からは2017年10月韓中間公式協議以外に両国高官の間でTHAAD問題解決のための非公開協議があったのではないのかという疑惑も提起されている。
匿名を求めた外交消息筋は「文在寅政府時期、青瓦台(チョンワデ、旧大統領府)関係者がTHAADによる韓中葛藤局面を解消するために数回にわたって非公開で中国を訪問し、この席で『中国側がTHAADの影響を受けないようにする』という趣旨の立場を明らかにしたという話を聞いた」とし「THAADレーダーが中国に向かったり、中国の戦略的動向を探知したりすることがないようにするという意味を、中国側が『一限』に対する約束として受け入れた可能性がある」と述べた。
これに対して文在寅政府青瓦台核心関係者は「安保および軍事に関連し、韓国政府が唯一『合意』または『約束』をできる対象国は同盟国である米国だけ」としながら「中国の主張とは違い、THAAD三不はもちろん一限も初めから合意や約束が行われるのは不可能な構造」と述べた。
◆「宣誓」から「宣示」へ…表現論争まで
汪報道官が定例記者会見を通じて「三不一言」に言及する当時に使った表現を巡っても議論が大きくなっている。会見直後、澎湃など中国メディアは汪報道官の発言を「韓国政府が正式に対外に三不一限政策を宣誓した」という内容で紹介した。宣誓は対外的な公式約束の意味を持つ。
だが、中国外交部がホームページに掲載した発言録には宣誓ではなく「宣示」という表現が表記された。宣誓と宣示は中国語の発音が同じだ。だが、宣示は「立場を表明した」という意味で対外的な約束を意味する宣誓よりも拘束力が弱い表現に該当する。もし汪報道官が「宣誓」という表現を使ったとすれば、これは韓中両国が約束をしたという意味で外交的な波紋が最大化する状況だった。
汪報道官が「宣誓」の意味を念頭に置いて立場を発表したものの、韓国外交部の抗議などを見て遅まき「宣示」に表現を変えたのか、最初から「宣示」を念頭に置いた発表だったのかは定かではない。ただし「一限」主張に加えて、表現を巡る混乱は韓中間のTHAAD葛藤を深める悪材料として作用した。