通貨の命綱を中国に託した韓国
韓国の「離米従中」が金融の世界でも始まった。韓国は弱点の外貨不足を中国に助けてもらう。かわりに人民元の国際化を後押しする。真田幸光・愛知淑徳大学ビジネス学部長と、鈴置高史編集委員が深読みした(司会は田中太郎)。
ルビコン河を渡って中国に
鈴置:韓国が「中韓通貨スワップを貿易決済に活用する」と発表しました。韓国は外貨調達の命綱を中国に託すことになります。人民元経済圏作りを積極的に手伝うという、米国をいたく刺激しそうな対価を払ってです。真田先生の読み通りになりました(「日韓、スワップの切れ目が縁の切れ目」参照)。
真田:日本の「対韓スワップ打ち切り」が韓国の背中を押したのです。韓国はついにルビコン河を渡って中国側に行きました。もちろん、恐る恐るではありましょう。鈴置さんの言い方を借りれば、金融・通貨面での「離米従中」です。この面では米国を相当に不快にさせたでしょう。
命綱を中国に託す
「中韓スワップを貿易決済に活用する」ことが、なぜ「外貨調達の命綱を中国に託す」ことになるのでしょうか。
鈴置:説明します。12月4日、韓国銀行は以下のように発表しました。韓中両国は通貨スワップを結んでいる。外貨不足で困った時に融通し合う政府間の約束だ。今後はこれを“平時”にも発動し、韓中企業間の貿易決済に使うことで両国は合意した……。
「スワップを使って貿易決済」のくだりをもう少し詳しく説明してください。
鈴置:中国からモノを輸入した韓国企業を想像してください。これまではドル建てで取引していましたから、手持ちのウォンを銀行でドルに換えてもらって代金を支払いました。
今後は人民元建てで値段を決めておき、人民元で支払えるようになります。韓国銀行が中国からスワップで人民元を借りてきて、それを輸入企業に貸し出す仕組みができるからです。反対に、中国企業が韓国から輸入する時は、中国人民銀行が韓国からスワップで借りて来たウォンを決済通貨に使います。
人民元を使う利点は?
鈴置:取引にドルを介在させないので、ドルの変動リスクを避けられるうえ、手数料も安くなる――と韓国銀行は説明しています。
だったら、今までも韓国企業は人民元を使って輸入すればよかったのではないですか?
人民元の国際化を後押し
鈴置:理屈はそうです。しかし、現実にはなかなかうまくいきませんでした。人民元とウォンを換える市場の規模が小さいからです。
中国への支払いに相当な額の人民元が要るとします。でも、それと同額のウォンを欲しがる人が同時にいないと取引が成り立たちません。つまり、ある程度以上の人民元を入手するのは簡単ではない。このため、貿易決済はなかなかスムースに行かなかったのです。
そこでこれまではドル建てで値段を決め、ウォン・ドル市場でウォンをドルに換えて決済に使っていたのです。ドルとウォンを換える市場は大きいので交換が容易です。現在の中韓貿易の決済は95%がドル建てです。人民元は0.8%、ウォンに至っては0.04%に過ぎません。
ところが新方式なら、巨大ダムのように資金量の豊かなスワップ枠から、必要なだけ人民元を汲み出せます。ちなみに中韓スワップの上限は3600億人民元あるいは64兆ウォンで、米ドルで換算すれば580億ドルぐらいです。
この、スワップを利用した貿易決済を呼び水に人民元建て、あるいはウォン建ての取引を増やす。そうすれば人民元の国際化もウォンの国際化も進められる――と韓銀の担当者は語っています。
動かしながら作る?
では、新たな方式が一気に浸透するのでしょうか。
鈴置:いいえ。簡単には広まらないと思います。さっき、韓銀の借りて来た人民元を使って輸入代金を支払った韓国企業の例を引きました。よく考えると、先ほどの話で取引は終わっていないのです。この会社はどこかから人民元を調達して韓銀に返さなければならないからです。
でも、そもそも人民元とウォンを交換する市場が極めて小さいのでそれは容易ではない。総合商社なら中国に輸出もしているので、そこで得た人民元を返済に充てることが可能でしょうが。
このニュースを報じた朝鮮日報の電子版(12月4日付)によると、韓銀の担当者も「来年までに人民元とウォンの決済比率を1%ポイントずつ上げるのが目標」と控えめな姿勢です。韓国政府も「スワップを貿易決済に活用」なんて理屈優先の構想は、そう簡単に実現しないと分かっているのでしょう。
そこで、真田先生に伺いたいのですが、こういう仕組みって世界に前例はありますか?1997年のアジア通貨危機の際に“米国の横暴”に怒ったマレーシアのマハティール首相(当時)が、これとよく似た「米ドルを介さない決済システム」を東南アジア各国に提唱しましたが、立ち消えになっています。
真田:他にこんな仕組みがあるか、寡聞にして存じません。私は「中韓のスワップ利用の決済システム」はまだ細部は詰まっていなくて、韓国人らしく、というか中国人らしくというか、実際に動かしながら作り上げていくつもりではないか、と睨んでいます。
妙に焦る韓国
鈴置:韓国はやけに急いでいますね。「12月後半から実施」としています。4日発表ですから周知期間は10日ほどしかありません。
なぜ、韓国はそんなに焦っているのでしょうか?
真田:資金ショートしがちな年末を控え、市場に「安心してくれ」というメッセージを送りたいのでしょう。世界経済の下振れリスクは依然高い。韓国も成長率がどんどん落ちている。恒常的な外貨不足という韓国の持病は市場でも有名ですから、いつ激しいウォン売りにさらされるか分からない。
仮に、国全体でドルが足りても個別の金融機関がオーバーナイトの超短期のドルを返せなくなるリスクもあります(「日韓スワップ打ち切りで韓国に報復できるか」参照)。
この記事は、ぜひご一読を!
かなり長い記事なので、最初のさわりだけ掲載しておきます。
韓国の現状を見事に説明していますな~
オイラもブログで取り上げている中韓スワップの貿易決済のついての今後の予想が面白すぎます~
詳しくはコチラ⇒『中韓スワップ有効活用法を構築するニダ!』 2012/12/05
「2012年は離米従中元年」、「北朝鮮化した韓国」、「元経済圏のお先棒」、「友人のいない韓国」、などという面白キーワードが満載ですんで、笑韓ウォッチャーだけでなく、東アジア経済に興味のある方には絶対読んで欲しい記事ですよ~~w