各国中銀のジレンマで議論沸騰-物価安定が優先か、成長重視か
12月10日(ブルームバーグ):世界最古の中央銀行の内部で、各国・地域の金融当局が直面するジレンマをめぐって新たな議論が白熱している。
344年前に設立されたスウェーデン中央銀行をはじめとする各国中銀の政策当局者は、インフレの脅威が迫っていないか、あるいはそれが過ぎ去りつつあるとみられる状況で、どの程度物価安定の責務から離れて代わりに経済成長や雇用、金融安定に注力できるかをめぐって意見を戦わせている。これは30年間にわたるインフレとの闘いからの転換を示す。
英財務省の元職員で現在は英銀HSBCホールディングスのチーフエコノミストを務めるスティーブン・キング氏は、「現時点で中銀が懸念していることは多くあり、インフレが最優先課題となっていない」と指摘。「中銀が長期的に物価安定を果たすと人々が信じている限り、他の目標に対応する余地がある」と述べた。
物価以外の目標にどのくらい傾注すべきかについては異論が多い。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長とともに米プリンストン大学で経済学を教えた経歴を持つスウェーデン中銀のスベンソン副総裁は、インフレ率を過度に低水準に維持すると雇用に痛手となると主張。一方、同中銀のイングベス総裁は低金利に伴う債務バブルが心配だと表明している。同中銀は10月の会合で、政策金利を1.25%に据え置いた。
イングランド銀行(英中央銀行)はリセッション(景気後退)から脱却したばかりの鈍い成長に対応しようとする中で、インフレ率が目標を3年間上回っていることを無視している。一方、ECB内では国債購入計画に批判の声が上がっている。日本では、緩やかなデフレ局面でより急激な金融政策を行うという選択肢に日本銀行が否定的な見解を示し、16日の総選挙を前に政治論争となっている。
バーナンキ議長率いるFRBは物価の安定と雇用の最大化という2つの責務を担っており、より広範な目標の流れを先導している。FRBは数十年にわたってインフレ抑制に力点を置いてきたが、今は失業率改善に向けた政策に狙いを定めている。
シティグループの国際経済担当グローバル責任者、ネイサン・シーツ氏は11月26日付リポートで、「主要国が直面している進行中の課題はインフレ見通しの緩和と相まって、各国中銀が2013年末まで、恐らくそれ以降も緩和的な方針を維持することを示唆するものだ」と指摘している。
>344年前に設立されたスウェーデン中央銀行をはじめとする各国中銀の政策当局者は、インフレの脅威が迫っていないか、あるいはそれが過ぎ去りつつあるとみられる状況で、どの程度物価安定の責務から離れて代わりに経済成長や雇用、金融安定に注力できるかをめぐって意見を戦わせている。
>イングランド銀行(英中央銀行)はリセッション(景気後退)から脱却したばかりの鈍い成長に対応しようとする中で、インフレ率が目標を3年間上回っていることを無視している。
>日本では、緩やかなデフレ局面でより急激な金融政策を行うという選択肢に日本銀行が否定的な見解を示し、16日の総選挙を前に政治論争となっている。