IMF専務理事:銀行の損失、半分はまだ公表されていない
11月23日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は23日、世界的金融危機からの銀行の損失のうちほぼ半分はまだ明らかにされていないとの認識を示した。
同専務理事はロンドンで開催された英産業連盟(CBI)の会議での質疑応答で、「まだ多額の損失が公表されていない状況にあるというのがわれわれの見解だ」と述べた。未公表の損失の「規模を推定するのは難しいが、全体の半分に近いというところだと思われる」と語った。
ストロスカーン専務理事は会議でのスピーチで、多くの先進国・地域で銀行システムは「依然として資本不足」の状態だとし、金融環境は「正常には程遠い」との見解を示した。IMFは9月に、銀行が1兆5000億ドル(約133兆円)相当の有害資産を帳簿上に抱えているとの見積もりを示していた。
ストロスカーン専務理事は、「恐らく開示は米国の方が欧州よりも若干進んでいるだろう。どちらにしても半分程度だ」と語り、「まだ先は長い」と指摘した。IMFは9月に、世界の金融機関の評価損と融資や投資からの損失の見積もりを15%引き下げ3兆4000億ドルとした。
同専務理事はスピーチで、当局が金融業界規制について計画を示さなければ、金融機関が「今のうちにパーティーをやっておこう」という姿勢で過剰なリスクをとるかもしれないとして、「現時点では、規制をめぐる不透明さが逆にリスクテークを促す要素になっているかもしれない」と述べた。「金融機関が今後に厳しい時期が来ると予想して」今のうちにリスクを増やす可能性があると指摘した。
経済については「安定し改善しているが依然として非常に脆弱(ぜいじゃく)」との認識を示した。質疑応答では「二番底の可能性が高いとは考えていない」が、そのような展開を回避できると「決まっているわけでもない」と語った。
英国についてはIMFは厳しい2009年の後、10年は「むしろ力強い回復」を示すと予想しているとして、同年の英成長率は約0.9%となりユーロ圏を上回ると見込んでいると述べた。
原題:IMF’s Strauss-Kahn Says Half of BankLosses Yet to Be Revealed (抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=afY6_PR3hPE0
世界銀行やIMFのコメントって、結構当てにならないと思いますが、ストロスカーン専務理事のコメントが面白いので、取り上げます。
>世界的金融危機からの銀行の損失のうちほぼ半分はまだ明らかにされていないとの認識
オフバランスシートのことですね。
会社の資産・負債であっても、バランスシート(=貸借対照表)に計上されないこと。たとえば、先物取引やオプション取引などの取引は、元本を想定して取引をおこなう。しかし実際に想定元本を払い込んだり、受取ったりするわけではないので、貸借対照表に計上されない。オフバランスシート取引、または簿外取引ともいわれている。
また工場などの資産を得るために、借入金を用いて取得した場合に、借入金に対しての利子を支払わなくてはならない。会社が利益を上げたとしても、利益の中から、利子を支払っていくので、総資産利益率の値が低くなってしまう。低くなるということは、会社の評価が低くなってしまうので、あらたに借入をする場合には、借入コストが上昇してしまう。これを解決する方法として、資産を証券化して売却する方法がある(例:資産担保証券)。すると支払わなければならない利子が減少し、総資産利益率が向上するので、借入コストが減少することにつながる。
このように総資産利益率や自己資本利益率等を高めるために、オフバランス化させることは有効な手段であるとされている。
http://www.nomura.co.jp/terms/search/off_bs.html
金融機関は、今回の金融危機でバランスシートに計上されない負債(金融子会社のよる負債や不動産や証券に対する評価損)が、まだまだあると言っているのですね。ストロスカーン専務理事は・・・
>IMFは9月に、銀行が1兆5000億ドル(約133兆円)相当の有害資産を帳簿上に抱えているとの見積もりを示していた。
なるほど、IMFは9月に世界の金融機関の帳簿上の不良資産が1兆5000億ドル程度であると報告をした。しかし、実際は、3兆5000億ドル程度は不良資産が存在すると言っていたようですね。
>「恐らく開示は米国の方が欧州よりも若干進んでいるだろう。どちらにしても半分程度だ」と語り、「まだ先は長い」と指摘
ストレステストの公表の事ですね。米国では、それなりのストレステストを公表したが、欧州では、ほとんど公表されてませんからね。
米国のストレステスト⇒http://blogs.yahoo.co.jp/x_men_go_go/16133623.html
EUのストレステスト⇒http://blogs.yahoo.co.jp/x_men_go_go/21644126.html
>英国についてはIMFは厳しい2009年の後、10年は「むしろ力強い回復」を示すと予想しているとして、同年の英成長率は約0.9%となりユーロ圏を上回ると見込んでいる
これはリップサービスで、今後の英国はじめEU各国の経済状態は注目ですね。