大きなフナ☆ | げむおた街道をゆく

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信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

朧月の、静かな夜だった。

投網漁を楽しんでいた石井八郎左衛門は、散歩中らしき侍に声をかけられた。
「どうだい、獲れるかね?」
「ああ! 今夜は大漁だ。」

そう答え、魚籠を水面から引き上げて侍に見せてやった。

「おお、ずいぶんでかいフナがおるな!」
「この大きさのヤツが、あと二匹はおるぞ?」
「明日はご馳走だな、うらやましい! どうだね、できれば一つ…。」
侍が魚籠に手を伸ばすと、

「さわんじゃねぇぇえ! このクソヤロー!
いいか、こっちはこう見えても主君持ちだ!

こういう時はな、殿様にいいヤツを差し上げて、
自分は小さい魚でガマンするのが忠義ってモンだ!

テメエも侍なら覚えとけ!」

「そ、それは殊勝なお心がけ。大変失礼したっ!」

侍は、あわてて宵闇の中に逃げ去った。

朝、目覚めた鍋島勝茂は、料理番に今日の献立の希望を問われたが、
「まあ、少し待ってろ。今にいいものが来るから…。」
「?」
そこへ石井八郎左衛門が、台所にタライを持ってやって来たとの知らせが入った。
「昨夜、獲れたばかりのフナにござる。殿に召し上がっていただきたく、お持ち致しました。」
タライには見事な大きさのフナが数匹、泳いでいた。

「ほら、な?」

短く言って、勝茂は満面に笑みを浮かべた。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 肥前佐賀藩主、鍋島勝茂

 

 

 

ごきげんよう!