若さ故の匹夫の勇☆ | げむおた街道をゆく

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鍋島勝茂は、若いころ、夜に狩猟をすることを好んだそうだ。

佐賀の城下を離れたところに、とある山寺があり、

山上にある寺とそのあとに続く墓園まで、
九折りほども重なっていた山であったそうだ。
 

その墓園に猪、山犬、狼のたぐいが多く出ることを聞き、暗夜に狩猟へと出かけ、

鉄砲にて猪、狼を多く撃った。

時に、この山には普通の物よりはるかに大きな猪があった。
これは深夜になると巣より出てくるのだという。

勝茂は、この事を知ると早速、

「今夜、夜更けにそれを撃ちに行くぞ!」
しかし、
「人が多くいては足音も多く、猪もそれを恐れて出てこないだろう。」
と、供を一人も許さず、鉄砲と銃弾二発だけで、勝茂ただ一人で山の中に入った。

さて、山上の寺から二町ほど行った所で星の光を頼りに向こうを見ると、

牛のように巨大な猪が畑を掘り返しているのを見つけた。
「得たり!」
勝茂、鉄砲を取り出し火蓋を切って狙いをつける!と、

どうしたことであろうか、火縄が消えてしまった。
 

これではどうしようもないと勝茂、もと来た道を戻っていった、半町ばかり戻ったところで、
体の大きな男が墓園を通ってこちらに上がってくるのが見えた。

「さては、かねがねこのあたりに山賊が出るということも聞いた。あいつもそれであろうか?」

そこで密かにその人物に忍び寄り、すぐ側まで近寄ったところで鉄砲を下に置き、

何か怪しい動きがあれば太刀で一打!

との覚悟で声をかけた。

 

「何者か!」

「若殿ですか! 私です!」

 

「!」

それは何と、勝茂の刀番・東嶋市之丞であった。

「市之丞? どうしてここに来たのだ?」
 

「はい、お伴することを固く禁ずる、との事でしたが、

夜中にこのような場所にお一人で狩猟されるというのは、
あまりに勿体なき儀であると思い、なにか非常の事でもあってはと心配になったため、

ご命令に背き、このように参ったのです。」
 

「そうか…。ともかく調度良かった! お前火打石を持っているな? 早く出せ!」
 

「は?」

ここでも勝茂、大猪のことしか考えていない。

彼は市之丞から火打石を借り火縄に火をつけると、

再び猪のいた場所に戻っていった。

大猪は、先の場所に未だいた。

勝茂はこれに狙いをつける…、が、勝茂に気がついた猪、

彼に向かって突進してきた!
 

勝茂はとっさに刀を抜いて斬り放つ!

この一撃が幸いにも猪の胴を打ち抜き、これを倒した。
しかしこれはあくまで偶然っであって、そうでなければ自身が危ない所であった事、

勝茂にはよく解った。

この日より、勝茂は、夜の狩猟をしなくなったということである。

後、彼の息子である元茂がまだ幼い頃、勝茂はこの時のことを語り、

「お前は成長してもこのような、匹夫の勇を成すようなことはしてはならないぞ。」

と教訓したという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ 肥前佐賀藩主、鍋島勝茂

 

 

 

ごきげんよう!