臨終☆ | げむおた街道をゆく

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栗山備後守利安と言えば、

軍陣にての高名は11度、

そのうち5度は槍働き、6度は采配をとって人を使っての働きであり、

また仕物(命令で人を斬ること)も4度、

このうち2人は、豊臣秀吉が、黒田如水に仰せ付けられた者を、利安が実際に斬った。
 

これほどの戦働きをしたが、合戦で怪我を負ったということはなく、

ただ一度、朝鮮の役で左の小脇に矢がかすり、
血が少し滲んだ事のみが例外であった。
 

このように大剛の栗山利安であったが、普段は自身の戦の話など、

まるですることの無い人であったという。

時に彼は81歳で死ぬ。

 

その前日のことである。

利安はすでに、呼吸をするのがやっと、という状態であり、

子どもたちをはじめとした看病をしている者たちは皆、
枕元でその時を覚悟していた。

 

と、この時。

利安は不意に、カッと目を見開いた。

 

そして、

「馬だ! 鉄砲だ!
あそこに敵が出たぞ、味方の人数をここに出せ! あちらに出せ!
鉄砲をあの山に上げて撃たせろ!
敵は馬で駆け寄ってくるぞ!

味方は馬から降り芝生に座れ!

采配次第に、いかにも静々と懸かれ!」

うわ言に、合戦での指揮を叫び始めたのだ。

看病の者たちは皆、大いに驚いたが、そのうちの一人が利安の耳元で、

「かしこまり候。」

と答えれば、おとなしくなり再び寝入った。

栗山利安は、その一晩の間に5度合戦の指揮を叫び、夜明け頃、儚くなった。

戦国の世に生まれ育ったいくさ人の、臨終の模様である。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 黒田家の一老、栗山利安

 

 

 

ごきげんよう!