島津家の中間者・孫七が、父・四郎右衛門と口論の末、カッとなって、
父を棒で打ったとの評判が流れた。
評判はたちまち薩摩一円に広がり、島津日新斎の耳にも達した。
「けしからん。速やかに、かの者に罰を与えよ。」
直ちに家臣が派遣されて孫七を斬り殺し、これを埋めて捨てた。
報告を受けた日新斎は、激怒した。
「なんという事をしたのだ!
孝行とは、幾万ある行動に先立ち、
千の経巻、万の典籍に必ず書かれる人間第一の徳目である。
それを破りし不孝者など、三千の刑法をも用いても、なお余りある。
然るに、なにゆえ刑を軽くしたのだ?
今すぐ彼奴の死骸を掘り起こし、
額に『不孝』の焼印を押して道端にさらせ!
そうでもせねば、目を驚かし耳に針すれども、忘れて不孝を犯す者が出るわ!」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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