山内一豊が近江唐国の領主になった前後のこと。
一豊は、秀吉から築城の目付に任じられた。
しかしこの仕事、働く人員に食事を振る舞わないといけなかった。
家計は苦しいが他の目付はちゃんと振る舞っているし、
どうしたものかと一豊は悩んでいた。
そこで一豊の妻・千代は、夫を陰ながら支えようと思い立ち、
自分の髪を売って食事代に当てた。
当時、髪はかつらやつけ髭の材料として需要があったのである。
髪を売った千代はそれを隠す為に頭に手ぬぐいをしていた。
一豊もさすがに気付いて何故手ぬぐいを巻いてるんだと理由を聞いた。
真相を知った一豊はびっくらこいて何も言えなかったが、
千代は、
「これなら埃が払いやすいですよ。」
と気丈に答えたそうな。
もう一つ。
結婚してすぐの山内一家は極貧だったらしく、まな板も買えなかったそうな。
そこで千代は枡を裏返してまな板代わりにしたという。
この枡は山内家が大切に残してきたそうで、裏には包丁の跡があったとか。
藤並神社に奉納されていたが戦災で失われたとのこと。
最後に。
千代は、明からの織物や、それの国産織物の切れを集めては、
ちまちま縫い合わせて、一つの小袖を仕立てたそうな。
ある日のこと、それを見た客が、千代の小袖が素晴らしいので、
ぜひ秀吉様にお見せになってはと勧めた。
千代は謙遜して断ったのだが、客があまり勧めるので思い切って秀吉に見せてみたところ、
秀吉も小袖の出来に感心したそうな。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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