判官殿の鞍☆ | げむおた街道をゆく

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蜂須賀阿波守至鎮は、古戦の事跡を尋ねて、古物の名のある物を求めなさった。

そんな折のこと、屋島の戦いで義経の身代わりに立った佐藤継信の葬式の時、
義経は秘蔵なさった“大夫黒”という馬を引き連れなさったのだが、
その鞍が志渡の寺(志度寺)にあった。

 

かの寺が大破していたのを、

至鎮は補修してその鞍を乞い求めなさった。

それから後年に至って、その鞍を知る者もいないために、

他の鞍と一所に交えて、しまい置かれた。

ところが、無頼の悪馬がいて誰も乗る者がいないという時、

上田半平という者は、
馬術の達人であったのだが、この人が言ったことには、

「かようの馬には、古作の良き鞍を置いて乗れば良いであろう。」

とのことで、鞍をたくさん出して見ると、その中に極めて古き鞍があった。

上田はよく見て、「これこそ!」と言い、かの悪馬に置いた。

 

この時、上田を嫉む者がいて、

「馬の善し悪しがどうして鞍に寄るだろうか。」

と、言ったのだが、
三浦次郎右衛門という鉄砲頭の老人も見物しており、かの鞍を見て、

「判官殿の鞍を、久々に見たぞ。」

と、言った。

人々はその故を聞き一同に驚いたが、

かの悪馬もかの鞍で快く乗る事ができたので、

上田の馬術はますます名高くなったということである。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 阿波国徳島藩藩主、蜂須賀至鎮

 

 

 

ごきげんよう!