蜂須賀修理大夫正勝は、日頃愛宕山を信仰し、その頃は播磨龍野におられたので、
愛宕山へ参詣なさり、祈念なさっていたところ、
どこともなく老人の山伏が法螺貝を持って来た。
山伏は、
「宿坊より献上いたします。」
と言い、法螺貝を差し置いて帰った。
正勝は不思議に思って宿坊に入り一礼を申されたところ、
宿院の僧はこれを聞いて、
「左様のことは、こちらは一向に存じ申さず。」
と言った。
このため僧は、
「きっと権現より奉りなさったのでしょう。
戦場で貝を吹く事は獅子の吼えるが如く、この一声には悪魔は降伏して怨敵は退散し、
子孫は御繁栄となりましょう。」
と祝した。
その夜、正勝の夢の中で山伏と童子が歌を吟じ、
"香をとめよ 蜂須賀もとに 澄水の 濁らぬ世々の 末が末まで"
と吟じていた。
これより以後、出世なさって阿波守となられた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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