水野勝成は、年をとってもよく鷹狩をした。
年齢が年齢なので、
布団をしいた駕籠に乗って移動した。
この事について勝成は、
「お前達はおかしな事をしていると思っているかもしれんが、
わしにはちゃんとした考えがある。」
と語った。
考えとは下情を知る事だった。
勝成がいつものように鷹狩をしていると、
昔、勝成に仕えていた男に会った。
勝成は、
「お前は昔三百石で仕えていたな。
越前で召し抱えられて千石と聞いたが、何かあったのか?」
と尋ねた。
男は、
「確かに越前で加増していただきましたが、
かつて上様にお仕えしていた頃、上様は下の者でも、お優しくしてくださいました。
また、懇ろにお話をしていただいたことも思いますと、
七百石など取るに足りないと感じ、こうして戻って来た次第です。」
と言った。
こうして勝成は、その日の内に男をかつてよりも高禄で召し抱えた。
勝成は隠居しても鷹狩に行った。
ある日、先述の男の家に行くと門が閉ざされていた。
不思議に思って理由を聞いたところ、
勝成の息・子勝俊の勘気に触れて、去って行ったという。
いきさつを知った勝成は、
「惜しい男を失った。わしの倅は下の者の気持ちがわからないとみえる。
立派な人物なら、主君や上司の言う事だろうと無理な事を簡単に承服したりはしない。
部下に多少の咎めがあっても、二、三度は気付かぬふりをするべきだ。
例えどうしようもない場合でも、
まずは相手の友人に、諌めさせるようにするものなのに。」
と言って残念がったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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