水野勝成といえば、後年の名君ぶりと共に、
前半生の野放図で無茶無茶な生き様も有名である。
勝成自信はその生涯に後悔はなかったようではあるが、
それでも気にかかることがあった。
それは彼が殺した人々についてである。
といって勘違いしてはならない。
彼は数えきれないほどの人間を戦場、およびそれ以外で殺してきたが、
その殆どについて気になどかけていない。
ただ、そのうちの5人だけどうにも、忘れられないのだ。
何故か。
「いやあ、その五人を殺したのは、今考えても理不尽だった。」
殺した人間自身が、しかも勝成のような人間が理不尽というのだから、
おそらくは想像を絶する理不尽さで殺しちゃったのであろう。
その為、勝成は、
「まあ、あれだけ理不尽に殺しちゃったんだから、あの5人はウチに祟っても仕方ないよね。」
などと言っていたらしい。
その後いつしか、水野家中では勝成が理不尽に殺した5人のことを、
誰ともなしに”五霊鬼”と呼ぶようになり、
何か不吉なことが起こるたびに”五霊鬼の祟りだ”と囁かれたそうである。
のちに福山藩水野家が5代目で断絶した時も、”五霊鬼の祟り”と取りざたされたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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