池田利隆☆ | げむおた街道をゆく

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慶長十八年正月、池田輝政が亡くなった。

輝政の遺骸を棺に納める日、池田家老臣・伴玄札は、

次の間において、腹に脇差を付き立て割腹を図ろうとした。

城内にいた人々がそれに気がつき、慌てて押しとどめ、

当時19歳の若き主君・池田利隆に告げた。

利隆は直ちに駆けつけ、玄札に問いただした。

「これはどういうことか!」

「私は先君のご厚恩を被りました。

それゆえ、お供つかまらんといたしましたが、
見付けられ押し止められ、悔しい限り…。
殿、どうかお許しを!

願わくば先君のお供をさせてくださいませ!」

それを聞いた利隆は、静かに語り始めた。

「玄札よ、先代に信用され、重用されていたお前が今、命を捨てて先代の後を追えば、
玄札は後継である利隆が劣った君主であるので見捨てて死んだのだ、そう噂されるだろう。
そうなれば、先代以来の家臣で私に心服してくれる者は、きっと一人もいなくなる。」

利隆はいつしか、涙を流していた。

「この利隆を孤独にする事が、忠であり義であると思うのならかまわぬ、強いては止めぬ。
早く死ぬがいい。
早く死んで、私を一人にし、先代に奉公つかまつれ!」

それを聞いて玄札はしばらく黙っていたが、やがて利隆の方を振り向き、

「侍たるものがいったん刀を腹に付きたてた以上、ここで止めるべきではありません。
ですが、ただ今かたじけないお言葉を頂戴いたしました。
伴玄札、恥を忍んで生きながらえ、若殿にご奉公いたします。」

そう言って、平伏した。

玄札をはじめ老臣たちの補佐を得た池田利隆は、藩を良く治め、名君と称えられたという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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ごきげんよう!