大坂夏の陣の時、家康の軍勢が京より出陣する朝、
各々行粧を調え、御先手より段々に押し出す所、
板倉伊賀守(勝重)は長袴の裾を繰り上げ、家康の乗馬の、轡の水付きを取って、
「今日の御出陣は、是非に思し召し止まらせ給え。」
と、引き止めた。
これに家康は、甚だ機嫌を悪くし、
「臆れ者、それを放せ!」
そう叱りつけたが、板倉は重ねて、
「なるほど、臆れ申しました。腰は抜けていても、先ず今日は御滞留遊ばすべし!」
そうしきりに引き止め、遂に家康も出馬を思いとどまった。
その日、京都所司代は京市内で、火付けをしようとするなどした、
大坂与力の党類を、多く召し捕った。
これを伝えられ、家康の機嫌は直ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!