井伊直孝、曰く。
「人間一生の勤めは忠孝の道である。
聖賢千万言の教えも、皆忠孝のためであろう。
忠孝を勤めようと思うなら、主君と先祖の恩を常に忘れるな。
『恩を知らぬ者は、思いもかけず災難にあうものだ。』
と、古人もおっしゃった。油断してはならない。
人間の苦には、飢寒よりもたいへんなものはない。
百姓町人が昼夜となく骨を折るのは、
飢寒を防ぐためである。
中には家職の勤めに油断して、飢寒に及ぶ者も多い。
一方で、武士には生まれながらの飢寒はない。
皆々が父母妻子兄弟を養い、家来を使い、
安楽に暮らしているのは、主君ならびに先祖父母の恩徳ではないだろうか。
この恩を常に忘れなければ、忠孝の道を忘れようもない。
古老の物語などによれば、
『毎日食に向かい衣服を着る時、主君と先祖父母の恩徳を思え。』
ということである。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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