井伊直孝は、大坂の陣に際して、配下の老軍師・兵庫に、助言を求めた。
「お前は軍略に優れていると聞く。
そこで今度の戦について、何か言っておきたいことはないか?」
「某は生い先短い老いぼれなので、
今度の戦に参加できないことが無念でござるが、
今まで探究してきた軍略の秘訣を記した書がありまする。
殿のご参考になれば幸いにござる。」
書を受け取った直孝がそれを見てみると、ただ、
『大将は志を決断し、迷わず下知あるべし。』
とあった。
「なるほど道理だ。戦では迷わず決断しよう。」
直孝の言葉を聞いた兵庫は、
「某は長年探究してきましたが、結論はただ、この一言でござる。
曖昧な心構えでは兵の道をなすことはできませぬ。
その他に、某が申し上げることはございませぬ。
この秘訣をご理解頂けたならば、こんなものは無用の長物でござる。」
と言って、直孝の前で書を燃やした。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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