ある人が、語ったことだが、
大坂の陣の折、大野主馬の部隊が夜討ちをして戦功のあった時、
主馬は自身の首尾よろしき段を、秀頼に報告して、
木村長門守(重成)に取りなしをしてもらい、
自身に感状が頂けるようにと要望した。
長門守は、その時は良いように会釈したが、後で主馬を密かに呼んで言った。
「先程の御感状ご所望の事、
言われるまでもなく今回の武功は上様もよくご存じですから、
下されること相違ないでしょう。
ただし、私が思うに、あなたの御身分の上に感状を頂いて、
一体誰にそれを披露するおつもりなのでしょうか?
匹夫独身の者は、重ねてまた、他の主人に仕える時、自らの名誉としてこれを差出します。
しかしあなたは、現在上様の為に、あなたご自身もご兄弟も、
股肱羽翼の補佐をされています。
そのような人が功成り名を遂げられる事について、
一体誰がそれを争うというのでしょうか。
あなたについては、御感状お望みのことは、ご遠慮すべきだと思います。」
この言葉を聞くと主馬は大いに恥じ、重ねて云うべき言葉もなかったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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