豊臣秀次の家臣に、浅井井頼(あざいいより)という剛勇の侍がいた。
一説に、浅井長政の落とし種とも言われる男である。
秀次には寵愛する小姓がいた。
この小姓がある時、罪を得、罰として座敷牢に押し込められることとなった。
この話を井頼は聞きつけ、主君の寵愛する小姓とは、
どれほど美しいものかと一目見たくなり、
夜陰に紛れ秀次の屋敷に潜入した。
難なく潜入に成功し、小姓を一目見た井頼は、その美しさにすっかり魂を奪われた。
小姓が彼に気付き声を上げようとしたため、そのまま押し倒し、事を遂げてしまった。
翌日、その事を知った秀次は激怒し、
「井頼を成敗せよ!」
と命令を出した。
が、浅井井頼は、そのくらいでへこむような男ではなかった。
彼は堂々と城に登り、大広間で、
「わしを殺せと、殿のご命令じゃ。誰か殿の命を受けて、わしを討つ者はおらぬか!」
と、高言を吐いた。
しかし秀次の家臣たちは皆、井頼の武勇を恐れ、誰一人立ち向かおうとせず、
彼はそのまま見得を切って、秀次の元を出奔した。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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