森蘭丸が、信長の小姓として仕え始めてから、暫くたったある日。
諸将が集まる中、信長が、
「障子を開け放ってきた。すぐに閉めてまいれ。」
と蘭丸に命じた。
蘭丸が障子を閉めに行くと障子は閉められていた。
そう、信長はあえて閉まっている障子を閉めてこいと命令することで、
蘭丸を試したのだ。
そこで蘭丸は、どうしたか。
障子を音がしないように開けると、音を立てて閉めて戻ったのである。
そして信長は満足そうに、
「どうだ、障子は開いていたであろう?」
と蘭丸に言った。
さて、その後、武将達が退席して信長と二人きりになると蘭丸は、
「いえ、障子は閉まっておりました。」
と改めて報告した。
「しかし、先ほど障子を閉めた音がしたが、あれは聞き間違いじゃないよな。」
と信長。
そこで蘭丸は、
「殿は皆に聞こえるように『いま障子を開け放してきた』と仰せられました。
私が閉まっておりましたと申し上げれば、
殿の間違いを周りの者に知らせることになります。
それで、わざと開けてから、皆に聞こえるように音を立てて閉め直したのです。」
信長は、この答えを聞いて大いに満足したという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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