下野の那須家重臣に、大関夕安と言う者がいた。
ある時、宇都宮氏の軍勢が那須を襲ったが、那須氏はこれに大勝した。
もうすこしで相手の大将も討ち取れる、と言う時、夕安は追撃に反対し、
あえて宇都宮勢を撤退させた。
時の人々は夕安のやったことが理解できず、
「何故わざわざ逃がすような、不思議な真似をしたのでしょうか?
今回の戦ではあのまま追撃すれば、宇都宮を滅ぼす事もできたのに。」
と不満を持った。
これに夕安。
「こんな歌がある。『雲はみな はらひ果てたる 秋風を 松に残して 月を見るかな』
今、宇都宮の劣勢を利用して、那須優位の同盟関係を築く努力をする事無く、
宇都宮を滅ぼしてしまえば、我々は小田原の北条と直接に勢力圏を接してしまう。
もし国境を接した状態で強大な北条と敵対してしまえば、
我々が那須を保持する事は不可能だろう。
ここは宇都宮を残し、彼らに北条の相手をしてもらい、その間に我々は、
軍備を整え、家中の紐帯を強くし、準備が整ったところで、
北条への敵対を宣言すべきなのだ。」
人々、夕安のこの答えに、大いに感服したそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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