佐々成政は、八千の兵を率いて、
前田家の侍大将・奥村助右衛門永福が守る能登末森城を囲み、
成政は本陣をもって後巻を抑え、厳しく攻めた。
成政、「この城さえ破れば、能登一国は即座に打ち従うことだろう。
後巻のないうちに乗っ取れ!」
と命じた。
末森城はわずか二、三百ばかりの士卒で敵を防いでおり、
永福は、
「これほど強く攻められては、もはやこれまでだ。自害しよう。」
と悲観的であった。
しかし、その妻は小袖を掻き取り、鉢巻をして刀を横たえ、
鹿をたくさん煮て下女に持たせ、
塀内の人々に、自ら配り食べさせていた。
そして、
「昔、楠木という大将は、日本国を敵にして籠城したと聞きます。
明日は金沢より後詰のあることでしょう。
ただ、一夜を防ぎなさい。」
と励まし廻っていた。
これについて永福は、
「今日の振る舞いは、男子よりもすぐれている。」
と言った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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