平家物語☆ | げむおた街道をゆく

げむおた街道をゆく

信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

北条配下に、佐野城主・天徳寺宝衍と言う勇将がいた。
この人が、琵琶法師に平家を語らせたときの事。

法師は先ず、佐々木高綱宇治川先陣を語った。

坂東武者達が先陣の功を競う勇猛な場面である。
が、天徳寺、ここで雨のような涙を流した。
 

次はおなじみ、那須与一扇の的の場面。

平家の中でも、爽快さと美しさを兼ね備えた屈指の名シーンである。

が、ここでも天徳寺、滝の如く涙を流した。

後日、天徳寺が、

「昨日の平家はどうだった?」

と、左右の者たちに聞いた所、
「大変面白かったのですが、殿が涙に咽んでいたのがどうにも解らず…。」

と言うと天徳寺、
逆に驚き、
「今までお前達を頼もしく思っていたのに、今の一言でガッカリしたぞ。
いいか、先ず佐々木高綱の場面だが、あの時高綱が与えらていた名馬「池月」は、
頼朝公の舎弟である範頼や、寵臣の梶原ですらいただけなかった物なのだぞ!

そんな馬に乗ってもし先陣出来なければ、必ず討ち死にして再び帰らないと、
暇乞いして出陣するのだ!

この志、泣かないでいられようか!

また、那須与一も、大勢の中から選ばれ、

ただ一騎陣頭に出で馬を海中にいれ的に向かうまで、
その一挙手一投足を源平の両軍が、鳴りを潜めて見守っている。
もし射損じれば味方の名折れ、馬上にて腹掻っ捌くほどの覚悟を持って向かっていくのだ。
その志を見よ!

泣けて泣けてしょうがないだろ!

わしくらいになると、戦場に赴く時はいつも、

佐々木高綱や那須与一の心で槍を取るから、
平家を聞くときでも自然と彼らの心を思い、泣けてきてしまうのだ。

ところがお前達は何だ!

お前達の武辺というのは、ただ単に勇気に任せてやっているだけなのか!
本当の武辺とは、もののふのあわれを心にとどめてこそあるものだ。

そうでなければ、
真実頼もしいとはいえないものなのだ!」

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 天徳寺宝衍と号す、佐野房綱

 

 

 

ごきげんよう!