やもめ女と、やもめ男☆ | げむおた街道をゆく

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信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

ある日、上野の国の吉村の男が、女に頭を棒で殴られ、血を流したと訴えてきた。

男、「それがしは男やもめであり、この女もやもめであります。

私達二人は同じ里の近所に住んでいて、
この女の家に夜な夜な通って情を交わしておりましたが、この女は別の男ともつきあい、
それがしを嫌い始めて泥棒呼ばわりして棒で頭を叩いてきました。
しかしそれがしは決して泥棒ではありませんから、無実を訴えに来たのです。」

と言った。

女、

「男と会ったことは無く、この男が夜中に家の戸を破って入ったので、

泥棒に間違いありません。」

と言った。

男はこれを聞いてもさしたる変化も無く、目もすわっていて受け答えもよどみがない。
結局どちらが正しいのかはっきりしないでいた。

そこで奉行の板部岡江雪斎が、

「やもめの男女を裁くのは珍しい事だ。両人とも証拠を示せ。」

と言った。

すると女、

「私は三年前に夫を亡くして、その時から理由の分からない腫れ物が出来ています。
医者曰く、これは「開茸」と呼ぶそうでなかなか治りません。
これを他人に見せるのは恥ずかしいので、

それ以来男と付き合うなどと思った事がありません。」

と答えた。

男、

「しかし、女に腫れ物があっても寝起きは容易にしています。」

と返すと女は大笑いして、

「私の体には腫れ物なんてありません! わざと嘘を言ったのです。」

と言った。

そのとたんに男は顔色を変え返答できなくなってしまったので、

男を縄にかけて女は家に帰した。

盗人もうまく嘘をついたが、女の知恵には敵わなかった。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 仁義の道ありて、板部岡江雪斎

 

 

 

ごきげんよう!