天文六年の夏、小田原浦近くに、釣舟が多く浮かんでいると聞いた北条氏綱は、
小舟に乗って海士の働きを見物した。
この珍事の御遊の時、氏綱が酒に興じていると、
一尾の鰹が舟に飛び込んで来た。
氏綱は心から喜んで、
「勝負にかつを!」
と格別の祝辞を述べて、その鰹を酒肴とした。
同年七月上旬、上杉朝定が武州へ発向したが、
氏綱はこれに討ち勝って武州を治めた。
このようなこともあって諸侍は、戦場の門出の酒肴には、
もっぱら鰹を用いたのである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!