彼の懐から☆ | げむおた街道をゆく

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上杉家家臣・水原常陸介親憲は、

鴨居に頭をぶつけるほどの長身で、
顔は馬のように長く大きく、更にその顔にはほくろが無数にあるという異相だった。


また豪胆で、かつ芸もよくする風流人であり、
その異相の顔におしろいと紅を塗りたくって頭に真っ赤な頭巾を巻いて女装し、
ほうきを持って踊るという宴会芸の持ち主で、

この芸には流石の景勝も微笑み気に入っていたという。
 

水原は武勇の士らしく、平時戦時に拘らず、
いつも兵糧代わりに味付けされた餅を懐に入れていた。

彼は謙信に従って川中島の戦いにも出て武功を立てたという老兵であり、
大坂の陣に出陣したころにはもう既に70歳。
 

その後、景勝が米沢へと帰還してくる際、上杉家家中は全員城の前に居並び、
主君の帰還を出迎えることとなっていたのだが、その中に当然水原の姿もあった。
 

家中の者たちが、老年のこの武者を、

「年寄りが無茶をする。」

とからかうも笑って取り合わず、
主君の帰りを平伏して待った。
 

米沢城へと帰還する景勝の行列が家臣一同の出迎えを通り過ぎる中、
ふと景勝は水原の姿に目を留め、彼の前で輿を止めさせた。

「常陸、変わりないか。」

景勝から声がかかるも、水原は一向に顔をあげず平伏した姿のまま動かない。
周囲の者たちは、水原も老齢であるからさては待っている間に寝たのかと思い、
彼の体を揺すって起こそうとすると、彼の懐から兵糧代わりの餅が転げ落ちた。
これが水原親憲の最期の姿であったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 子供の石合戦如き、水原親憲

 

 

 

ごきげんよう!