大坂の陣の時、徳川頼宣の家臣で、矢部虎之助と言う者がいた。
彼は、大力であり、
長さ二間(約3.6メートル)の指物、
三尺あまり(約1メートル)の大刀、
立物は、大位牌に一首の歌、
『咲く頃は 花の数にも足らざれど 散るには漏れぬ 矢部虎之助』
と記されていた。
この様相での出立に、諸人は目を驚かせたが、
これらはあまりに重すぎて馬が進まず、
戦場でも人より遅れて功もなく、
残念に思っていた所、家中からも武道不案内の者との評判に会った。
虎之助は、心中これを恥じ、憤り、食を絶って、20日ばかりの内に死去した。
誠に惜しき士であった。
凡そ甲冑指物等には、心得があるべきなのだ。
目立つのは、その大小には寄らない。
小印だ大印だなどと言われるが、小印であっても、大いに目立つ指物もあるのだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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